僕は……彼女のPMSを分かったふりをするしかない
付き合って4年、一緒に住んで2年になる同世代の恋人・ユミさんがいるタケトさん(36歳)。2人とも仕事優先で暮らしているが、普段のユミさんは明るくて、あまり感情的にならないタイプだから話が弾むという。「ところが月に数日、彼女が極端に不機嫌になる時期がある。僕はそれが生理中なのかと思っていたら、生理前なんだそうです。どんより暗くて、何を言ってもあまり笑ってくれないし、何でも投げやりなんですよ。おいしいパスタでも食べに行こうよと誘っても、普段なら『行く。どこどこ?』と乗ってくる彼女は『うーん』と言うだけ」
半年ほど前、PMSについてもっと話してほしいとタケトさんはユミさんに頼んだ。どういう状況なのか、どういう気分になるのか。ユミさんはぽつりぽつりと話してくれた。頭では理解できても、もちろん心身ともに分かったとは言いがたい。
「でも彼女は、分かってくれるよねという感じだったので、分かったと言うしかなくて。実感として分からなくても、理解はしたつもり……だったんですが」
「PMSによる八つ当たり」としか思えない彼女の言動
タケトさんに分かってもらえたという安心感からなのか、彼女はその時期、彼に自分のイライラをぶつけてくるようになった。以前は我慢していたのだろう。それも分かったから、受け止めようとは思ったが、「PMSによる八つ当たり」にしか思えないことも増えてきた。「家事を全部押しつけられます。この時とばかりに網戸掃除までやらされる。まだいいんじゃないのと言うと、『今すぐやって! 汚れているのが耐えられない』って。なんだかPMSをいいことに甘え過ぎじゃないの?ということが多くなった。
仕事が立て込んで残業しているのに『プリン食べたい。どこそこのプリンじゃないとダメ。買ってきて』とLINEがくる。かなりイラッときますよ」
生理が来れば、そんなことがあったのを忘れたかのように普段の彼女に戻る。あんなにいろいろ命令してくるのはちょっときついとタケトさんが言ったら、「そんなこと言ったっけ」と覚えていない様子。「医者にPMSのこと相談してみたら?」と言っても、ずっとこうやってきたのだから大丈夫と言う。
「多分、以前からずっと我慢してきて、初めて僕が分かってくれた人だと言っていたから甘えているのかもしれませんが、僕にも我慢の限界というものはあるんですよね」
タケトさんの表情がどんより曇っていた。
もちろん、生理は10人いれば10人とも症状が違う。生理痛で苦しむ人がいる一方、「うっとうしいだけでほぼ痛みはない」という人もいる。PMSも同様だ。他人が理解するのは難しいが、振り幅広くさまざまな人がいるということだけは忘れてはならない。恋人や友人と、もっとオープンに話せるようになればいいのだが。