離婚しているかも?
自分が60歳になった時、子どもたちは29歳と26歳。さすがにもう、親を頼りにはしない年齢だろうとヒロミさんは考えている。「別に結婚していようがしていまいが構わない。孫が欲しいなんていうことは言わないつもりです。子どもたちは好きなように生きてくれればいい。できるだけ早く自立してほしいですね」
ただ、そのころの自分たち夫婦を考えると、どうなっているかまったく想像がつかないと苦笑する。このまま60歳までうまくやっていけるかどうかもわからないのに、それ以降なんて想定外です、と。
「お互いに忙しくしていれば、相手に苛立っても目をつぶって日常生活を続けられるけど、どちらかが家にいる時間が長くなってくるとケンカが増えそうですね。子どもが小さいころから、家庭に関わる時間が夫と私ではずっと不均衡が続いているから、知らず知らずのうちに恨みがたまっているような気がします」
まだ結婚して9年なのにこの状態だから、あと30年過ごしたらどうなることかとヒロミさんはため息をつく。今すぐ離婚は考えられないが、30年後までに離婚する可能性は結構ありそうだと思っているそうだ。
「退職金とか年金とか、その後の人生を1人で生きていける経済的な目処がたてば、お互いにひとりに戻るのもいいかもしれないと思っています。そういうこともありうると考えて、これからの人生を組み立てていったほうがいざというとき慌てなくてすみますよね」
老いた夫が病気になったらどうするか?
特に考えるのは、老いた夫が病気になったときのこと。積極的に支えたいと思えないとヒロミさんは言う。申し訳ないけど、これはやはり愛情が薄いのだろうと彼女は妙に冷静につぶやいた。「もし子どもが病気になったらと考えると、それだけで胸がドキドキするし、何があっても私が治すと断言できるんですが、それが夫だったらと思うと、逃げたいなと(笑)。実際には逃げないと思うけど、長い期間、支え続けると断言もできなくて」
そういうシミュレーションをすることがいいかどうかはわからないが、ヒロミさん自身は「常に自分の気持ちを把握しておきたいから、ときどきそうやって想像してみる」のだそう。自らに率直でありたい、そのほうが幸せだと思うからと彼女はちょっと複雑な表情を浮かべた。