夕食でも指図され、冬になると白湯を差し出され
当然、夕食の時も「まずこれね、次はこれ」と、妻におかずを食べる順番を指定される。いきなり白米を食べようものなら、「どうして!」と妻の甲高い声が響く。野菜から食べた方が血糖値の急上昇を抑えられるというのだ。「そういうのも全部、ネット情報ですからね。それは正しいのかもしれないけど、時には、どうしてもごはん一口からいきたいことだってあるでしょ。僕は自分の体の声を聞いてるんだと反論したことがあるんだけど、あなたの体の声はあてにならないと言われてしまった(笑)」
家にいても水分はこまめに、入浴前後、睡眠前後は絶対に水を飲んでと言われる。秋冬は「はい、これ」と白湯が差し出される。体にいいのは分かっていても、「本当なのかな」と思う気持ちと、たとえいいとしても「時にはジャンクなものをジャンクな食べ方で」と思うこともある。人間、正しい理屈だけで生きてはいられないのだ。
「外食もうるさいんですよ。小学生の子を2人連れていたら、だいたいファミレスになっちゃうんだけど、一品料理はダメだと言われるんです。定食風にいろいろな食材が入っているものでないと。子どもがハンバーグ定食を頼んだら、野菜サラダを追加される。肉の3倍の野菜をとらなければいけないと妻は信じているから、帰宅してから手作りの野菜ジュースを飲まされたりします。外食して帰ったら、家族でのんびりしたいなと思うんですが、妻はせっせとキッチンに立つ。もういいじゃん、というと怒られます」
ついに学校給食にまでダメ出し
ブロッコリーはゆでると栄養がなくなるから焼いて食べるのがいいとか、タマネギは加熱するとある種の栄養分がなくなるとか、もちろんそういう知識は大事だとマサキさんも思っているが、それに縛られて食べたいものが食べられない、出てきたものをおいしく食べられないのはかえってよろしくないと感じている。「子どもの給食の献立を見て、『ちょっと栄養が偏ってる』『栄養が足りない』とつぶやくんですよ。下の子なんて1年生だから、学校でうちのママが、栄養が偏ってるって言ってたよと意味もわからず先生に伝えてしまって……。学校や先生の非難を子どもの前で言わない方がいいと僕は思うんですけどね」
子どもに、勉強しろとうるさく言ったりすることはないのに、食事にだけは本当に細かい。それがありがたいような迷惑なような、時々モヤモヤしたりイライラしたりするんですと、マサキさんは苦笑した。