子育て

修学旅行「2泊3日で中学7万、高校10万円」は負担が重い? 葛飾区は“無償化”で自治体格差も

修学旅行の平均費用は中学校で約7万円、高校で約10万円と決して安くはありません。いっぽう東京都葛飾区のように“無償化”に踏み切った自治体も。修学旅行の費用問題について、日本修学旅行協会 理事長の竹内秀一さん、事務局長の高野満博さんに話を聞きました。

古屋 江美子

執筆者:古屋 江美子

旅行ガイド

修学旅行費用、中学で約7万、高校で約10万。経済的に断念する子も……

物価高の今、学費が家計に占める割合は決して小さくありません。そのなかでも修学旅行の金額は高く、家計へのインパクトも大きいものです。
毎月積み立てていく修学旅行費用

毎月積み立てていく修学旅行費用

日本修学旅行協会の『教育旅行年報 データブック2023』の調査データ(2022年度分)によると、修学旅行の費用は、中学校が6万9881円でコロナ禍前(2018年度調査)より5431円増加。高校は10万5333円でコロナ禍前(2018年度調査)より2650円増加と上昇傾向でした。

>>>【平均費用】修学旅行費用、国公立では6万9881円。私立中学との差は?

修学旅行の費用は基本的に毎月積み立てていくため、一度に全額支払うわけではありませんが、やはり高いという印象でしょう。実際、経済的な事情を理由に参加を断念する子もいるそうです。

前述の調査でも、不参加の理由に「経済的」を挙げている人がいました。割合は中学校で2.7%、高校では3.3%と、数字だけ見るとそこまで高くはありませんが、「学校不適応」など別の理由に隠れていることもあるため、実際はこれより高い可能性もあるようです。
 

修学旅行って格安ツアーと比べて割高なの!?

ツアー広告では、京都旅行で3万9800円や4万9800円などという料金を見かけることがあります。それを見ると、「なぜ修学旅行は、2泊3日で6万~7万円もかかるのだろう」と疑問が湧いてくる方もいるでしょう。オーダーメードのせいか割高に見えます。

同協会 事務局長の高野満博さんは、「パッケージ商品は需要予測で売れない日程に最安値を設定し、お客さんを引き寄せます。最安値で比較するから高く感じるのであって、ゴールデンウイークやお盆はツアーでも安くありません」と説明してくれました。

通常の旅行の予約開始は1年前くらいなのに対し、修学旅行は1年半~2年前に手配するのが一般的です。スポーツイベントやMICE(会議・展示会など)、企業の周年行事なども早めに予約が入るそうです。パッケージツアーは、そのような予約がない日程で設定されているのだそう。

予約タイミングに加えて、料金に含まれる内容も違うと高野さんは続けます。

「格安ツアーは、交通費と一泊朝食付きホテルのみがほとんど。いっぽう修学旅行は、朝昼晩の食事、貸し切りバスやその添乗員、拝観料や入場料なども基本的に費用に含まれます。これらをノーマル運賃で足していけば、学生割引もあるため修学旅行の方が安くなるはずです。あとは修学旅行特有の費用として、保険や荷物の別送代も含まれています」

■中学校の旅行費用の内訳と構成比
日本修学旅行協会がまとめた中学校の修学旅行費用の内訳は以下の通りです。中学校の旅行費用の内訳と構成比(出典:教育旅行年報「データブック2023」国内修学旅行の実態とまとめ[中学校])

中学校の旅行費用の内訳と構成比(出典:教育旅行年報「データブック2023」国内修学旅行の実態とまとめ[中学校])

■高等学校の旅行費用の内訳と構成比
日本修学旅行協会がまとめた高等学校の修学旅行費用の内訳は以下の通りです。
高等学校の旅行費用の内訳と構成比(出典:教育旅行年報「データブック2023」国内修学旅行の実態とまとめ[高等学校])

高等学校の旅行費用の内訳と構成比(出典:教育旅行年報「データブック2023」国内修学旅行の実態とまとめ[高等学校])

首都圏などでは、通勤ラッシュの時間に荷物を持って新幹線の駅や空港まで行くのは大変ですし、周囲の迷惑にもなるため、前もって送っておくケースが増えています。

なお修学旅行は予算も限られており、受け入れ側も大きく儲けるのは難しいようです。それでも、キャンセルがほとんどなく、かなり先の売り上げを見込めるため、小さな企業であれば経営安定に寄与します。また、和室旅館なら1室に4~5人は泊まるため、一部屋当たりの売り上げが大きくなるというメリットがあるそうです。
 

葛飾区は無償化。修学旅行にも自治体格差が

こうしたなか東京都港区では、全区立中学校の中学3年生、760人が修学旅行でシンガポールへ行ったことが話題となりました。家庭の負担もありますが、区が多くを負担しています。港区は大使館が多く、外国人人口も多く、国際交流や相互理解に力を入れてきたことが背景にあります。

「港区の人数だからできたともいえます。また企業も多くて税収もある。税収を何に使うかは自治体の判断です。最近では東京都葛飾区が2025年度から小中学校の林間学校や修学旅行を無償化すると発表しています。自治体によっては給食を無償化するところもありますし、優先順位が違います」と同協会 理事長の竹内秀一さん。

山梨県小菅村の公立中学校でもオーストラリアへの修学旅行を実施していますが、こちらも全校生徒が十数人の小規模校だからこそできる取り組みといえそうです。

自治体によって優先順位が違ったり、自治体の規模によって対応に差が出たりするのはある程度やむを得ないところですが、小中学校に関しては「国からのサポートがあればさらにありがたい」と高野さん。現状、要保護家庭に対しては一定の金額を国が補助していますが、さらなる支援の拡大を目指して、協会としても毎年陳情に行っているそうです。

家庭の状況や自治体の対応にも差があるなか、できるだけ多くの子どもたちが修学旅行で多くの学びを得られるよう、いろいろな工夫や支援をしていく必要がありそうです。
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