娘の将来の夢の話を聞いて、ショックを受けた
そんな社会や男性との関係の中で頑張って生きてきたのに、もし我が子が母を否定するような生き方を選ぼうとしたら……。
夫婦でタッグを組んで頑張ってきた
「打ちひしがれていますよ、私。自分の生き方を否定されたみたいで」つらそうにそう言うのは、アヤノさん(51歳)だ。結婚して21年、20歳になる長女と17歳の息子がいる。ずっと共働きで頑張ってきたのは経済的な理由だけではなく、アヤノさんが仕事を自分の人生の一部だと思っていたからだ。
「私の母は専業主婦だったんです。決して幸せそうには見えなかった。父は横暴なタイプではないけど、随所に『オレが食わせてやっている』という気配がにじみ出るような人でした。
私が中学生くらいの時に母はパートに出るようになった。給料日はうれしそうでしたね。自分の自由になるお金があるってすてきなことなのよと、私に洋服を買ってくれたりした。結局、自分のためにはあまりお金を使わなかったけど、それでも自由になるお金が母を支えているように見えた」
社会の中で、歯車でしかない自分に疲れた
アヤノさんは大学卒業後、「とりあえず内定をもらった」大企業に就職、5年頑張ってはみたものの、単なる歯車であることに疲れていった。そんな時に知り合ったのが飲食関係の仕事をする同い年の男性だった。自分の店を持ちたいと夢を語る彼に、彼女は惹かれた。「私も彼の夢を一緒に追いたいと思った。でも、私はあなたを支えるよと言った瞬間、いや、違うと思ったんですよ(笑)。私にも夢があったと思い出した。それですぐに転職、中堅企業に入社しました。給料は下がったけど、やりたかった仕事への第一歩を踏み出してうれしかった」
彼はその経緯を見て、「よかった」と言った。自分の夢を支える女性と一緒に歩くのはしんどいから、と。互いに支え合おうという彼の笑顔を見て、アヤノさんは結婚を決めた。
「大変でしたけど、私は昼間の仕事、彼は夕方から夜にかけての仕事だから時間が合わない。それでも結婚して一緒に住んで、子どもができたら案外、時間的なやりくりがうまくいきました。互いに連絡も密に取り合って、なんとか家庭を保ってきた」
15年頑張った時、子どもたちも大きくなって少しラクになったとアヤノさんは言う。
>娘は自分を反面教師にしたのか……