これらはいずれも自治体の職員らがイラストを許可なく使用したことによるものですが、自治体以外にも、学校の教職員がイラストを無断使用したことにより損害賠償請求をされるという報道も今年に入ってよく見られます。
2024年2月以降、筆者の調べる限りでは、自治体・学校によるイラストの無断使用事例として以下のようなものが確認できました。
・イラストを無断使用した自治体・学校の一覧 上記事例のイラストの使用媒体は、広報誌、チラシ、生徒や保護者向けの資料など、紙媒体ばかりに見えますが、いずれの事例もほぼ共通してウェブサイトにも掲載されています。
紙媒体で市内などに配布していたものについては、著作権者も自分のイラストが使用されていたとしても分からないことが多いのですが、ウェブサイトにも掲載されている場合は、インターネットの画像検索などを利用すれば見つけることができるので、著作権者や著作権管理会社がイラストの無断使用を見つけたのだと考えられます。
このような自治体・学校などによるイラストの無断使用による損害賠償事例は、10年ほど前から割と見られるようになっていて、宮城県名取市では、2016年にイラストを無断使用して103万円を損害賠償した後、2023年に別のイラストを無断使用して新たに約17万円を損害賠償するといったこともありました。
なぜ近年、このような事例が相次いでいるのでしょうか。
理由1:画像検索の精度向上や機能追加
理由としてまず考えられるのは、Googleなど検索エンジンにおける画像検索の精度が向上したことや、類似画像を検索できる機能が追加されたことです。画像検索において利用者の多い「Google画像検索」は、2001年にサービスを開始したものの、当初は精度も低く、テキストでの画像検索しかできませんでした。しかし、2009年に類似画像を検索できる機能が追加されたことや、画像検索の精度が年々向上していったことに伴い、日増しに類似画像を見つけやすくなっていきました。
そのためか、2014年ごろから、岡山県瀬戸内市、滋賀県野洲市、山形県寒河江市、長野県須坂市といった自治体によるイラスト無断使用の損害賠償事例が次々と報道されるようになっています。
2024年2月以降の自治体や学校によるイラストの無断使用は、その多くがウェブサイトにも掲載されていたものですので、Googleなど検索エンジンの画像検索により見つかったものと考えられ、類似画像の検索機能や画像検索の精度向上によってイラストの無断使用を発見しやすくなっているという状況が見て取れます。
続いて、二つ目の理由も重要です。
>次ページ:職員らの著作権に対する意識の問題