「何がきっかけで円高・円安が発生し始め、何がきっかけで戻り始めるのか疑問に感じています」(22歳・女性)
という質問が届きました。そこで本記事では、そもそも「どうして円安が始まったのか?」について、筆者の考えをまとめます。
そもそも、どうして円安が起きたのか?
きっかけは2022年でした。コロナ危機による供給網の混乱、アメリカと中国の貿易摩擦(新冷戦)。さらにはロシアがウクライナを侵攻したことで米中対立が激化し、物不足に拍車がかかりました。また、異次元緩和の反動もあって、世界中で物価が急騰しました。そこで、日本以外の諸外国は「金利を上げ、貨幣の供給量を絞ることで、物価を抑えよう」と舵を切りました。
一方、日本は物価を抑える努力をしませんでした。日本のインフレはそれほど深刻でなかったですし、むしろ日本はバブル崩壊以降「デフレ不況」が続いていたからです。
経済的な話をすると、「ゆるやかなインフレ」が起きているとき、景気が順調に上昇しやすいです。インフレが起きているということは、「いまモノを買わないと、明日や明後日には値上がりしてしまう」ということでもあります。インフレは消費を促進するので、お金のめぐりが良くなり、経済が回ると言えます。
逆に「デフレ」が起きていると、景気が停滞しやすいです。デフレと不景気が悪循環することを「デフレスパイラル」と言います。
なぜデフレスパイラルが起きるのか?というと、デフレ自体が消費を抑制するからです。たとえば、デフレが当たり前の世界では物価は下がります。であれば、「いまモノを買わないでも、また安くなったときに買えば良い」と考えるのが合理的で、みんなお金を使わなくなります。みんながお金を使わないからお金のめぐりも悪くなり、経済が止まってしまうのです。
こうした背景があったため、日本は2022年に始まったインフレで、インフレの芽を潰さないでデフレ脱却することを優先しました。
諸外国が金利を引き上げた結果、2024年9月現在、アメリカの政策金利は5%を超えています。日本は0.25%です。
国内外で金利差が広がったことで、日本円に2つのことが起きました。
1つは「貨幣価値の希薄化」です。
利上げを始めた諸外国は、貨幣の流通量を絞りました。貨幣の流通量が減るということは、それだけ貨幣の希少価値が高まるということです。
一方、利上げをしなかった日本では、むしろ貨幣を流通させました。外貨の希少性が高まるなか日本円の希少性が薄れたことで、それが円安につながったのでしょう。
もう1つは「キャリートレード」です。
日本は金利が低いため、「外国人が低い金利で日本円を借りて、借りたお金で外国債を買い、高い金利を受け取る」という動きが広まりました。これをキャリートレードと言います。
日本はいつも利上げが遅いので、1990年代後半や、2005~2007年、2022~2024年など、日本円は何度も「キャリートレード」で資金調達に使われ、それが原因でさらに円安にも拍車がかかりました。
物価が年2%も上がっているのに、それ以下でお金を借りられるのであれば、借金してでも何かモノを買うほうが得です。外国人からすれば、日本円は「こんなに低い金利で貸してもらえるのか」というくらい低い金利なので、多額の借り入れがあったと考えられます。
キャリートレードは貨幣供給量を増やし、外貨を買う取引にもつながるため、円安につながる大きな要因だと筆者は考えます。
何がきっかけで、円安は終わる?
では、この円安は何がきっかけで終わるのでしょうか?円安の究極的な原因は「円の相対的な希少性が落ちたこと」にあります。ですから、その希少性を取り戻すために供給量が減れば、円安が終わると考えられます。
具体的なタイミングは分かりませんが、きっかけとして考えられることはいくつかあります。
1つは「日本銀行が貨幣の供給量を減らす(金融を引き締める)」ときです。利上げなどを行って日本円の流通量が減れば、希少価値も高まった上で円安が終わると考えられます。
もう1つ考えられるのが「諸外国が貨幣の供給量を増やす(金融を緩和する)」ときです。
為替レートは相対的なもので、日本円の希少性が上がらなくても、外貨の希少性が下がれば、円高に向かうと考えられます。
たとえば、(現実的には考えにくいですが)アメリカが「また政策金利をゼロにします!」と宣言すれば、政策金利が日本とアメリカで逆転して円高になるでしょう。
残念ながら、円安がいつまで続くか、具体的な日付を言い当てることはできません。
未来が分からない以上、円安・円高、どちらになっても生活が苦しくならないように、円建て資産や外貨建て資産をバランスよく持つことが賢明です。