親の言うことを素直に聞かなくなった……このままで大丈夫?
ある幼稚園の子育て支援講座で、「子どもの脳はどのように成長するのか」を脳科学的に解説する機会をいただきました。講座で受けた質問で最も多かったのが、「最近子どもが反抗するようになって心配」というものでした。それまで素直だったお子さんがイヤイヤ期になり、言うことを聞かなくなると、多くの親御さんが戸惑われるようです。
一般に「反抗期」とは、他人の言うことを拒否したり、反抗的な行動をとったりしやすい時期を指します。個人差はありますが、自分で立って歩けるようになってから2歳くらいまでの幼児期にみられる「第一次反抗期」と、小学校高学年から中学生くらいの思春期にみられる「第二次反抗期」に大きく分けられます。脳の成長から見て、それぞれの反抗期にはどのような意味があるのか、また、親はどう対応するのがいいのか解説します。
第一次反抗期のイヤイヤ期は「親への信頼」の証と考える
生まれて間もない赤ちゃんは、自分一人では何もできず、周囲の大人に従わないと生きていけません。しかし自分で立って歩けるようになる頃から、「自分でやりたい」という自我が少しずつ芽生えてきます。そうすると、親御さんが「○○してあげる」と言っても、「いや、自分でする」と主張するような、いわゆる「イヤイヤ」が起こるようになります。「イヤイヤ期」とも呼ばれる第一次反抗期は、精神的な成長の証でもあるのです。面白いことに、第一次反抗期の「イヤイヤ」は、親や身近な親しい大人に対してのみ起こります。初対面の人やあまり知らない人など、信用できないと感じる人に対しては見せない行動です。「言うことを聞かずにやってみたい。でも、もしうまくできなかったときは、ちゃんと助けてくれるはず」という「甘えが許される」ことが前提の反抗です。
ですからイヤイヤ期の反抗に対しては、「急にわがままな性格になった」「親の言うことを聞かなくなって、このままでは心配」と捉える必要はありません。子どもの主張を厳しく叱ったり、抑えつけたりしないようにしましょう。「自分を信用してくれているからこそのイヤイヤなんだな」と考えて、おおらかに受け止めることが大切です。忙しいと、子どもの行動をもどかしく感じることもあると思いますが、自分でやりたがることはなるべく温かく見守り、チャレンジさせてください。お子さんができることも増え、世界を広げることができます。
第二次反抗期も、「余計な干渉」をしすぎないことが大切
一方で、第二次反抗期は少し異なります。思春期になるとお子さんには肉体的な成長や変化が起こります。大人に変わっていくことへの戸惑いや不安から、情緒不安定になるお子さんも多いです。それまで家庭の中で親に守られて過ごしてきた子どもも、学校や地域でより多くの他人と関わるようになり、世界が広がっていきます。親子関係においては、互いの距離感を探ろうとします。子どもは、親から独立し、家庭の外に自分だけの世界をもちたいと思う時期です。一方で、親にとっては、成長しても子どもは子どもです。小さな頃と同じように、子どもの行動に口出しをして、抑え込もうとしてしまうこともあります。自分が自由になる世界を広げようと模索する子どもと、それを止めようとする親の間で、ぶつかりが生じるのは当然です。
第二次反抗期の親の対応も、第一次反抗期のときと基本は同じ。必要最低限の見守りをしながらも、余計な干渉はしないことが大切です。お子さんの世界が広がろうとしているのを邪魔しないように考えてあげるのがよいでしょう。
脳の成長に伴う、精神的な成長……「反抗期」は成長の過程で当然
子どもは体が大きくなるだけでなく、脳の成長に伴って、精神面も変化していきます。総じて反抗期は、親に依存している状態から成長し、精神的に独立していく過程で起こるものです。理由が理解できていれば、何も心配することはありません。ひどく反抗していたお子さんが、気づけば年老いたあなたのことを心配して「○○しちゃだめだよ」などと教えてくれるような時が来ますよ。