夫側だって「妻を諦めている」
「よく妻側が夫を諦めた、なんていう話を聞きますが、それはこちらも同じなんですよ」笑いながらそう話すタクミさん(46歳)。結婚して15年たつうちに、互いに諦めているのではないかと言った。
「人間、誰でもいいところもあれば悪いところもある。それを許容し合うのが夫婦なんじゃないかと思うようになっています」
とはいえ、妻の不機嫌だけはやはり耐えがたいものがあるそうだ。
「うちの妻は機嫌を損ねると、話しかけても返事をしなくなる。こっちは思い当たる節がない。以前は『オレが悪かったのなら謝る』と言っていましたが、最近は面倒だから言わなくなった。気づかないふりをするんです」
長男が「スパイ」役
中学生の長男が“スパイ”をしてくれている。「どうやらお母さんは、この前、同窓会があるから○日はあけておいてと言ったのに、お父さんが予定を調整すると言ったきりだから怒ってる」とか、「お父さんが夏休みの予定を急に変更したから、お母さん、めっちゃ怒ってるよ」とか教えてくれるようになった。「自分が悪い時はすぐに『うっかりしてたけど、この前の件、遅くなってごめん』と自分から言います。でも息子も理由が分からないということがけっこうあって。そんな時は無理に聞かずに放っておくのが一番いいみたいですね」
大人なんだからさ、と言いたくなることもある。言葉できちんと説明してこそ大人でしょ、と。だがそれを言ってはいけないとタクミさんは自制する。
「大人だって、自分で自分の気持ちを持て余すような気持ちになる時はある。そのタイミングで、大人なんだからと言われたらますます気分が悪くなりますよね。顔で笑って心でため息をつく。お互いにそうなのだろうと想像しながら耐えます」
いつかもっと時間がたって、子どもが巣立ってふたりになったら「昔はそんなこともあったよね」と話せるのかもしれないと、タクミさんは笑った。