「自分を基準にするな」という夫側の意見
自分の考え、感覚が正しいと思っている限り、歩み寄りは無い
引っ越し関係の会社を経営するヒロアキさん(40歳)は、笑みを浮かべながらそう言った。肉体労働はお腹がすく。わかっているはずなのに、同い年の妻は自分と8歳のひとり娘が食べる量を基準に考えているのだという。
「ちまちまとおかずを作るんですよ。いろいろなものを作るのは大変だと思うんですが、そのほうがまんべんなく栄養をとれるからと。その妻の気持ちはありがたいけど、こちらはもっとガツンと食べたい。仕事柄、体力を使いますから。
それを妻に言ったら、わかったと言ってくれたんだけど、あまり変わらない。再度言って空気が悪くなるのも嫌なので、冷凍食品を買っておいて、足りなかったからチンして食べていたら、『あなたは私の作る料理が気に入らないの?』と言われて。違う、足りないんだよと言ったら、ごはんを食べればいいというけど、ごはんばかり食べるわけにもいかない」
食事の量で夫婦ゲンカ、娘が泣き出す始末
しまいには口論に発展、妻は「そもそももういい年なんだから、そんなに食べることはない」と暴論を吐く始末。ヒロアキさんも、「オレがどのくらい体力使って仕事をしているのかわかってるのか。もっとちゃんと考えろよ」と売り言葉に買い言葉で言ってしまった。妻は泣き出し、娘まで「ママを泣かせないで」と叫ぶ事態になった。「足りないからと自分で作ってもダメなら、外へ行くしかありません。食事が終わるとコンビニに行って食べながら帰っていたら、近所の人に見られて、妙な噂がたったこともあります」
最近は深夜にこっそりキッチンに立つこともある。妻はわかっているはずだが、片づけておけば知らん顔してくれるようにはなった。
「だけど、こういうのってなんだか変ですよね。深夜に食べるのもよくないし……。妻ともっと話し合いたいんですが、妻はそんな隙を見せてくれない。ディスコミュニケーションの極みです」
本来、ヒロアキさんの妻は彼がキッチンに立ち入るのを嫌がっていた。自分の牙城を汚されるとでも思っているようだ。キッチンが妻のプライドの塊なのかもしれない。それも含めて、もう一度話し合いたいと彼は言った。