「生きているだけでいい」とは思うけど
同居する高齢の母の態度にイライラがつのるばかり
「デイサービスの様子をこっそり見に行ったことがあるんですが、母は変にプライドが高いところがあるので、みんなと交わろうとしないんですよ。帰宅して楽しかったかと聞くと、『別に楽しくて行ってるわけじゃないし』って。ゲームとか体操とかやっているんですが、スタッフさんに聞いても、確かにあまり楽しそうじゃないと。みんなで世間話をしていてもあまり参加しないようです」
誰か友だちできたの? と聞いても「みんなボケていて話にならない」と悪口をまくしたてる。スタッフに尋ねると、母以外は和気藹々(あいあい)とやっていると言う。
「いい年のとり方」とは?
「母を見ていると、どうしたらいい年のとり方ができるのかが見えてくる気がします。人と一緒に楽しむこと、他人を下に見ないこと、足腰を鍛えること、自分のことは自分でやろうと努力すること、年をとってできないことが出てきたら工夫をすること。そして周りに感謝すること。感謝という大げさなことでなくてもいい、ありがとうと一言いってニッコリすれば周りは動いてくれるものなんですよね」
とはいえ、母に今さらそれを強要することもできない。大学入学以来、母と同居することもなかったヨウコさんは、「親子といってもわかりあえないことのほうが多い」と嘆く。
「介護保険とは別に、有料サービスをしてくれる事業所もあるようなので、今後はそういうところを探してみようと思います。『なんでこんなに長生きしてしまったんだろう』とつぶやく母に、何が必要なのか、どうしたら少しでも生きていてよかったと思ってもらえるのか、考えたいとは思っているんです。でも実際に居丈高な母を見ると、イラッとしちゃうんですよね。人間、できていませんから」
ヨウコさんにも疲労の色が見える。共倒れにならないよう、そして息子に負担がかからないよう、少しずつ考え方を変えていく必要があるのかもしれない。