妻の「人への悪口」を聞くのは気が重い
誰でも愚痴や人の悪口くらいは言いたくなるときがある。夫だからと気軽に言ってしまう妻も多いのかもしれない。「だけど聞くのはしんどいです。うちの妻、本当に悪口が多いんですよ。それを自分は毒舌が売りだと思って言ってるところが、またつらい……」
そう言って苦笑するのはケンイチさん(43歳)だ。同い年の妻との間に12歳と10歳の娘たちがいる。
「共働きですから、妻にももちろんストレスはあると思う。平日、月に2回ずつお互いに好きなように時間を使おうと決めているんです。そのときに女友だちとストレス解消しているみたいですが、帰ってくると『○○ちゃんが老けててびっくりしたわ』『独身の○○ちゃんは気楽なのよ。お金だって好きに使える。それなのにあんな貧乏くさいファッションしていることないのに』と言いたい放題。楽しかったなら、楽しい気持ちのままでいればいいのにと僕は思うんですが、何か言わないと気が済まないんでしょうか」
テレビを見ているときでさえ、妻は「このアイドル、ずいぶん劣化したわね」と平気で言う。さすがに子どもたちの前で言っているときは、ケンイチさんも「やめろよ」と注意するのだが、「劣化は劣化よ」と妻は平然としている。
悪口ではなく楽しめる「毒舌」か?
「言いたいことは言わなきゃダメよと娘たちにも言っていますが、言っていい場所とタイミングがある。娘たちにはそういう躾をしなければいけないでしょ。でも妻は野放図に言いたいことを言っているから、それを真似られたら不安ですよ。職場ではさすがに慎重になっているようですが、たぶん失言が多いとか言われてるんだと思う」失言も、うっかりというより確信犯だから始末に負えないとケンイチさんは言う。人の悪口ばかり言っていると、そのうちブーメランを食らうぞと妻を冗談交じりに脅したこともある。「みんな私の毒舌を楽しんでるのよ」と妻はどこ吹く風だったが、本当は不快な思いをしている人もいるはずだと彼は思っている。
「実際、僕自身が嫌な気分になっていますから。悪口とか否定的な言葉って、口から出た瞬間、自分だって嫌な気持ちになるものですよね。心にもないお世辞を言ったり褒めたりする必要はないけど、無意味に否定的な言葉をまき散らすくらいなら、うまいことを言って相手をいい気分にさせたほうがまだいいと思いますね」
口に税金はかからない。まずは相手を褒めるほうが、否定するよりずっと夫婦間や家族の場が和むのは確かだろう。