「ママ、救急車が来たから!」と夫
うとうとまどろんでいると、少しずつ気分がよくなってきた。頭痛も吐き気もおさまりつつある。起きようとするとめまいがしたのでまた横にはなったが、この分ならもうじき起きられるだろうと判断した。すると夫が部屋に飛び込んできて、「ママ、救急車が来たから!」と言う。
「はあ? なんで、今さら? と思いました。夫は『なんか寝息が荒くて怖くなって呼んじゃった』と。救急隊の人たちが来て、親切にいろいろ聞いてくれましたが、私は大丈夫なのでと搬送は断りました。脱水状態からは抜け出したみたいですから、と。熱も寒気もなくなっていましたし」
それでも何かあったらすぐ連絡ください、病院に搬送しますからと救急隊は帰っていった。忙しい救急隊をわざわざ呼ぶ必要ないでしょう、もっと重篤な人を運べなくなったらどうするのよとサエコさんは怒った。
「だったら私に一言聞いてくれればよかったのにと言うと、『どうしたらいいかわからなくて、ずっと迷ってたんだけど怖いから119番してしまった』と、夫はぐじぐじ言っていました。
自分が怖いから呼ぶという発想が幼稚ですよね。この件でいちばん頼りになったのはまだ9歳の息子でしたね。冷静にいろいろ判断してくれた。少しは長男を見習ってよと言ったら、夫はむくれてしまいましたが」
冷静に対処できる「備え」が必要
突発的な事態が起こったとき、どういう対応ができるのかは重要だとサエコさんは言う。熱中症など誰にでも起こりうることだからこそ、冷静に対処しなければいけないのに、と。「夫にはネットで検索、対処法を覚えておいてと言いました。すると夫は、『そもそもママが熱中症にならないようにすればよかったんだ』と文句を言い出して……。確かにこの夏も暑いというから、今から気をつけなければいけませんよね。私ももっと猛暑対策を緻密にしなければと反省しています」
どんなに気をつけていても、熱中症というものは程度問題こそあれ、なるときはなるもの。しかも母親は、つい子どもを優先させて自分を後回しにしがちだ。だからこそ、熱中症になる危険性をいち早く察知して対処することが必要だ
【熱中症が疑われる人を見かけたら(厚生労働省)】