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独身の老後は2000万円が必要になる? 今こそ貯蓄ゼロから脱出を!【2024年時点・最新版】

「収入が少ないから増えたら貯蓄をする」「今はあるだけ使っても、あとから貯めればいい」と、貯蓄ゼロの人や貯蓄100万円の壁を超えられない人がそう思っているとしたら、取り返しのつかないことになります。中でも、貯蓄ゼロの人は、今すぐ、その体質を改善しないと、いつまでたっても100万円を貯めることはできません。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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<目次>

単身世帯の36.0%は、将来に備えた貯蓄が「ゼロ」

お金が貯められないのは、なにも収入が少ないからではありません。お金を貯める意志があるか、ないかの違いが大きいのです。もちろん諸事情により、「今は貯蓄ができない時期」ということもあるでしょう。しかしその場合でも、「貯蓄ができるようになったら、きちんとお金を貯める!」という意志があれば、厳しい時期を乗り越えることもできるでしょう。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2023年)」の単身世帯の結果を見ると、金融資産を持っていない人が全体で36.0%。20歳代で43.9%、30歳代で34.0%、40歳代で40.4%、50歳代でも38.3%と、高い割合で貯蓄ゼロという実態が明らかになっています。60歳代になって33.3%と下がるのは、定年退職時の退職金や住宅ローン返済が終わり、ようやく家計に余裕ができたためなどと理由は考えられますが、現役世代における貯蓄ゼロの割合は、定年世代と比べてかなり高いと言わざるをえません(※)。

単身世帯の年代別に、金融資産保有額の平均値と中央値をまとめたのが、次の表です。
年代別・単身世帯の金融資産保有額

年代別・単身世帯の金融資産保有額

単身世帯の金融資産保有額(※)は、金融資産を持っていない人を含めた全体平均で941万円。中央値では100万円です。中央値は順番に並べてちょうど真ん中にあたる人の保有額ですが、これが100万円というのは、いかに貯蓄が少ない人が多いか、ということです。

金融資産を保有している世帯だけでみると、平均は1492万円。中央値では500万円となります。この数値だけみても、貯蓄ゼロの人との格差が広がっていることがわかるでしょう。

年代別に平均値でみると、金融資産を保有していない人を含めた平均は、20歳代で121万円ですが、金融資産保有世帯だけの平均では219万円と、この年代で早くも98万円の差が開いています。年代が上がるにつれ平均が上がりますが、60歳時点では、772万円の開きになっています。

実感値に近い中央値でみても、20歳代ですでに大きな差がでており、金融資産を保有している世帯の中央値が103万円なのに対して、貯蓄ゼロの世帯も含めた中央値は9万円です。この傾向は年代が上がるごとに顕著になり、30歳代で金融資産がある世帯だけの中央値は300万円なのに対して、全体での中央値は100万円。40歳代で同じく500万円に対して47万円、50歳代で555万円に対して80万円。60歳で1100万円に対して210万円。このように年代が上がるにつれ、その差は大きくなります。

60歳代で3割以上存在する、貯蓄ゼロの世帯は、公的年金と手元のお金で老後を過ごせるのでしょうか?

貯蓄グセは若いうちに身につけることが重要

勤務先や雇用形態の状況によって、確かに収入そのものに大きな開きがあります。正社員雇用なのか非正規雇用なのかで、勤務先の貯蓄制度を使える、使えない、社会保障制度の違いも金融資産の保有額に影響を与えます。それでも若いうちに「お金を貯める意識」を持てるか持てないかで、その後の10年、20年が変わってきます。30代になったら貯蓄しようでは、いつまでたってもお金が貯められないのはデータからも明らかです。

1日でも早く貯蓄ゼロから脱出しておかないと、生涯にわたってお金を貯める意識を持つことができません。もちろん、30代、40代になってからでも遅くはありません。今や人生100年時代。老後を漠然とした不安のなかで迎えるのか、ある程度の安心感を持って迎えられるのかは、「今」にかかっているのです。

1年で100万円貯めるのは、至難の業でも、5年で100万円なら毎月1万6000円。10年なら毎月8300円。本当にこの金額すらムリでしょうか? 貯蓄できない言い訳を考えるクセをやめて、いくらなら毎月貯蓄ができるのか考えるクセをつけましょう。

おひとりさまは、貯蓄にもっと危機感を持つこと

今回紹介したデータは単身世帯。シングルである理由はさまざまでしょう。ずっとおひとりさまの人もいれば、離別・死別という人もいるでしょう。ただ事情は違っても、シングルで老後を迎えたとき、生活費は自力で確保しないといけないことに変わりはありません。結婚していて子どもがいても、家族に頼れないというケースはあるかもしれませんが、シングルの場合は、確実に頼れるのは自分の資産だけなのです。

現在、親と同居しているから住む場所の心配はない、という人でも生活費は自分で賄わなければなりません。そのときに、貯蓄が500万円ではあまりにも楽観的すぎます。公的年金の不足分として老後資金は2000万円必要と騒がれたこともありました。公的年金をいくら受給できるのか、家計支出はどの程度になるかで、実際の不足額は変わってきます。

2023年調査(2024年3月公表)の総務省「家計調査(家計収支編)」によると、65歳以上の単身無職世帯の実収入は12万6905円であるのに対して、支出合計は15万7673円で、毎月3万768円が不足となっています。年間で約37万円、老後30年として約1110万円の不足という計算になります。これはあくまでも平均値によるものですから、ひとりひとりの収支、不足額は異なってきます。

基本の生活費以外に、年間での支出もあります。車の買い替えや住宅のメンテナンス費用が必要となる世帯もあるでしょう。老後生活を豊かにするための趣味や娯楽にもお金が必要です。余裕のある生活を望むのであれば、シングルの場合でも1000万~2000万円程度は確保しておく必要があるかもしれません。

もちろん、老後の過ごし方、生活スタイルによって、1億円あっても足りない人もいれば、1000万円あれば、なんとかなる、という人もいるでしょう。人によって必要な老後資金は変わります。いくらあれば安心とは言えないまでも、ギリギリの老後資金で常に不安を抱えながら生活するのと、ある程度の安心感を持って老後を迎えるのとでは、老後だけではなく、現在の生活の質も変わってくるでしょう。

1000万円、2000万円なんてムリ!と最初からあきらめてしまうのか、コツコツとできる範囲でお金を貯める!という意志を持てるのか。遠い道のりのように思えても、若いうちから貯めようとする意志を持ち、貯めグセが身につけば、年齢とともに貯蓄のスキルも上がり、貯蓄スピードは上がっていきます。1日も早く「貯蓄ゼロからの脱出」を図りましょう。

※金融資産の保有額とは、預貯金、貯蓄性のある生命保険、債券や株式、投資信託、その他の金融商品の総合計。ただし、預貯金に関しては、日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分を除いた、「運用のため、または将来に備えて蓄えている部分」のみをカウントすることとしているため、銀行口座などに保有している金額のすべてではありません。文中の「貯蓄ゼロ」とは、将来に向けての貯蓄がゼロということで、現預金をまったく保有していないとは限りません。
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