ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授の研究によると、人は1日に最大3万5000回の決断をしているということだ。朝起きて、何を食べるか、何を着ていくかに始まり、人と話すときの言葉のチョイス、あるいは座る、立つ、歩くという動作に至るまですべて含めると、その数字になるという。
脳は決断を下せば下すほど疲労を起こす。だからといって、ただずっと休ませればいいというわけでもない。チョイスを減らすという方法はある。いつも同じ服を着ている人は、着て行く洋服を選ばないですむという選択をしているのだろう。情報番組で紹介されていた男性は、ほぼ毎日、同じ食事をとっていると話していた。栄養不足はサプリで補う。何を食べるか考えずに済むことによって、仕事でのパフォーマンスも上がったということだった。
35歳、情報量が多すぎて「決断疲れ」
ファッションもメイクも、友人との関係も思い切り楽しみたい。そのためにも携わっている仕事に全力投球、毎日、生き生きとしていたはずだったと語るのは、マユミさん(35歳)だ。ところが最近は、「いろいろなことが面倒」になってきた。
「年齢的にも疲れが出るころなのかなあと思っていました。毎日、考えることが多すぎて、いざ決めなきゃいけないとなると情報量が多すぎて決められない。友だちと食事に行くときも以前だったら率先して店のリストを作ってグループLINEで送っていたのに、それさえ面倒になってきたのが半年前。
決められないことが増えていって、洋服も3パターン作って日替わりで着るようになった。朝、決められずに遅刻するよりマシですから」
「決断回数」を減らすため日常を人任せに
今年になってから、「決断疲れ」という言葉を聞いた。「あ、私だ」と思ったという。決断回数を減らせばいいんだと気づき、仕事以外の決断をほぼ放棄するようにした。妹に来てもらって、1週間のコーディネートを決めてもらい、食事の献立も作ってもらった。すぐに食べられる冷凍食品、作り置きできる惣菜などがメインだ。「本を読むのが好きなのに、何を読もうか決断するのが億劫だったから、妹に読む本まで決めてもらいました。妹はおもしろがっていろいろなジャンルの本を積んでくれたので、かえって私も視野が広がるかもしれないと思えた」
そうやって日常生活を人任せにして過ごしてみたところ、そのうち「何を食べるか自分で決めたい」という欲求が湧いてきた。もともとは、すべて自分で決断できることを幸せだと思っていたタイプだから復活も早かったのかもしれない。
「自分で決めたいと思うのと、決めなきゃいけないと思うのとではまったく意欲が違いますよね。でも今でも、疲れたなと思うと早く寝て、ファッションも食事も手抜きしてと自分に言い聞かせています。以前の私は頑張りすぎていたのかもと気づきました」
生き生きと活動することが好きで、友だちも多かったマユミさんだが、少しだけ人生を見つめ直す時期かもしれないと思うようになったそうだ。
>33歳、根拠を求めスマホ依存→決断疲れ