モテたい欲求だって不自然じゃない
好きな人に愛されたいのは当然のことながら、「不特定多数にモテたい」という気持ちだって、決して不自然ではないだろう。会社員のマナミさん(33歳)はこう言う。「やり過ぎると同性から嫌われるのは昔も今も一緒ですが、天性で『人たらし』な人っていますよね。私の同僚の女性がそう。たとえば誰かに何かを借りて返すときに『ありがとうございました』とニッコリしながら、ちょっと相手の腕に触れたりするんですよ。彼女の笑顔と優しい触れ方に、同性でもドキッとするほど。
だから男性の中には、彼女が自分に惚れていると勘違いする人もいます。でもそうではない。彼女は誰に対してもそうなんです。彼女自身は別にモテたいと思っているわけじゃないんでしょうけど、天性の人たらしそのものの性格がそうさせるんでしょうね」
「天性の人たらし」を真似てモテたい
正直でいい人だから人気もある。彼女のように「天性の人たらし」ではなくても、真似てモテたいと思う人がいてもいいのではないか。「私も真似てみたひとりです。モテたかといえば結果はよくわからないけど、少なくとも人との関係が優しいものになったような気はしますね」
男性がやたらと女性に触れるといろいろ問題もあるだろうが、「モテたい欲求がある人のほうが、他人に優しいのではないか」とマナミさんは言う。
「職場の男性社員でも、女性を意識して穏やかに振る舞う人のほうが結果的に人気があるしモテますね。本人は『すみません、僕は女性にモテたいだけなんです』と明るく言ってしまうタイプだから、よけいおもしろいんですが……。上の世代の男性からはよく、思春期くらいにモテたいと自覚し、そこからどうやって努力していくかという話を聞きます。がんばってもモテない人もいるし、がんばらなくてもモテちゃう人もいる。でも涙ぐましい努力をしてきたとわかると、人間性が見えて嫌いにはなれない」
だからモテたい欲求を出すことは決して悪いことではないと思うと、マナミさんは笑いながら言った。
モテたいために自分を磨く。そんなことをストレートに言えなくなっている時代かもしれないが、人の欲求に蓋はできない。問題はその表現方法だ。人に不快感を与えず、人に圧をかけず、密かに試行錯誤していくしかないのかもしれない。
「女性も男性も、自分の意志で生きていくのは当然ですが、好きな人のために自分を変えるのも楽しいものだとは思います。やっぱりモテたい気持ちはありますから」
マナミさんはそう言って笑みを浮かべた。