人間関係

人生は「老い方」ににじみ出る?高校生だった私の性被害を黙認した叔母の悲惨な“老いの姿”(2ページ目)

実の両親は離婚、行き場を失い叔母夫婦の養女になった女性。しかしそこでも叔母の浮気や離婚、さらに再婚相手からの性的虐待に遭う。大人になった彼女は、入院している叔母を見舞ったところ、驚くような姿になっていた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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四半世紀ぶりに叔母に会って

両親とも叔母夫婦とも連絡を断っていたマユミさんだが、この25年の間に大学の2部で勉強して大卒となり、職場もいくつか変わった。30代前半で今の企業に職を得て、やっと安定した生活を手に入れた。

「われながら頑張ったなと思います。今の職場では周りがみんないい人で、楽しく仕事をしているし、他の部署の人と結婚もしました。他の人には普通のことでも、私にとってはひとつひとつがありがたくてうれしいことばかり。コツコツ真面目に頑張ってきてよかったと思っていたんです」

昨年夏、退勤しようと職場のビル近くを歩いていると「マユミちゃん?」と男性に声をかけられた。誰だかわからず戸惑っていると、叔母の元夫だと名乗った。そういえば面影があった。

「喫茶店で少し話しました。私は叔父と叔母の離婚理由を知らなかったけど、叔父に言わせると叔母の浮気が発端だったと。叔父は私を連れていきたかったけど叔母に拒絶されたと言っていました。ずっと気になってた、申し訳なかったと叔父が涙を浮かべて謝ってくれたんです」

自分を見る叔父の目は優しかった。この人は嘘をついていないと確信した。叔父は、元妻である叔母が現在、病気がちで生活に窮しているとつぶやいた。何もしなくていいから会ってやってくれないかと叔父は言った。

「叔母は再婚した男に逃げられ、元夫である叔父にすがったようです。ただ、叔父も新しい家庭があったから、私の母に連絡をした。ところが私の母は『妹のことは知らない。私が面倒をみる義理もない』と言ったそうです。私を自分の妹に押しつけたくせに。結局、一番悪いのは私の両親なんですよね。叔母夫婦を恨むのは筋が違うのかもしれないと思ったけど……。

とにかくいろいろなことが蘇ってきて、私自身、叔父と話しているうちに心身ともに具合が悪くなってしまいました」

病室で、別人のような叔母に再会

あらためて連絡すると言って帰宅し、夫に相談した。夫は彼女の混乱を少しずつ解いていくように話し相手になってくれた。

「昨年暮れに叔母が入院したというので、覚悟を決めて会いに行きました。あのころ私が受けていた性被害を、叔母が知っていたのかをはっきりさせたかった。だけど病室に入るなり、驚きました。まったく面影もなく、老け込んだ叔母がそこにいたから。

叔父はまだ面影があったけど、叔母は別人のようだった。まだ60代ですよ。私の周りには60代でも若々しくて元気な女性がたくさんいるけど、叔母はひどかった。病気のせいというよりは、彼女の人生そのものが過酷であり、彼女の生き方が悲惨だったんでしょうね」

マユミさんはあえてひどい言葉を使っていた。叔母への憎しみが渦巻いているのだろう。性被害の件を問いかけても、叔母は何も答えなかった。マユミさんへの謝罪もなかった。叔父は、叔母と姉、つまりマユミさんの母親との間にもいろいろ確執があったらしいと話してくれた。

「だけど最終的に全部、マユミちゃんがかぶっちゃったんだよね、大人の事情を。かわいそうなことをしたと僕は本当に思っていると、叔父だけがまた謝ってくれた。私が望んだ子ども時代は返ってこないけど、私は大人になってから、いい人たちに巡り会えて幸せだった。叔母は私に会った1週間後に亡くなったそうです」

人生、何があるかわからない。誰もが老い、老いは決して美しいものではない。だが、「老い方というものがある」とマユミさんは言う。そこまでの人生が、老いたときにすべて浮き上がってくるのだ、と。叔母に会ったことは、今後の自分の生き方を考えるよすがになったと彼女は真剣な表情になった。
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