奨学金をどのように返済していくか悩んでいます
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、お父様の介護や自分の将来について悩む32歳の会社員女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。自分の将来と父親の介護について悩んでいます
キャラメルマキアートさん
女性/会社員/32歳
中部地方/親の家で同居
■家族構成
父親(65歳)
■相談内容
以前は、かけもちの非正規でほとんど貯金もない状態でしたが、母が倒れたことをきっかけに正社員になり3年目です。母が昨年亡くなり、いよいよ父の介護や自分の今後について考えています。
持ち家のため、住居費は固定資産税の月割り分です。貯金は私個人が300万円、家の資産として300万円で合計600万円。使っていない宅地があるので売却予定。家と土地は父が施設に入るか亡くなった時点で売却予定です。どのタイミングで名義変更をするか悩んでいます。固定資産税がとても上がってしまうのではないかと不安です。
奨学金をどのように返済していくか悩んでいます。どうせなら一括で返して月の返済を減らしたいですが、貯金から切り崩してまで返済することがよいのか分かりません。お金の使い方として不必要な部分があればぜひご教示いただきたいです。
■家計収支データ ■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道
5万円ほど娯楽費に使い、ほとんどローンの繰り上げ返済と貯金に回しています。ローン繰り上げで、昨年冬は車のローン残額32万円ほどを一括返済しました。残りは雑費の補てんに使ったので(母の法事)、冬のボーナス分からの貯蓄なしです。昨年夏は10万円ほど有利子の奨学金返済に回しました。5万円ほど娯楽費と雑費に使い、20万円貯蓄しました。
(2)家計支出の詳細について
・車両費はガソリン代2台分。保険や車検代は含まず貯金やボーナスから出しています。車の保険料は年間2台で約4万5000円、車検代は2台で14万円ほどで貯蓄から出す予定です。
・通信費はWi-Fi、携帯2台(1台は格安スマホ)。
・雑費は主に奨学金とローン返済分
奨学金:毎月3万3000円。残りは無利子分150万円、100万円。有利子分100万円
車のローン:毎月1万4000円。残り32万円を一括返済し、完済
太陽光発電ローン:毎月1万8000円。残り150万円ほど
その他、NISAを毎月1万円購入、日用品や区費、住民税(父親分)などで2万円
(3)保険について
<相談者>
・就労不能保険(保障金額10万円/月、65歳まで払込み)=毎月の保険料2030円
・変額保険(死亡保障325万円、70歳まで払込み、65歳で解約予定)=毎月の保険料5000円
・医療保険(終身タイプ、入院日額5000円)=毎月の保険料3350円
・がん保険(終身タイプ、がん診断一時金30万円)=毎月の保険料2200円
・個人年金保険(65歳まで払込み、60歳から年額100万円、10年確定)=毎月の保険料2万円
<父親>
共済=毎月の保険料2000円
<その他>
家の火災、地震保険が月割りで7000円
(4)自動車について
ローンは昨年冬のボーナスで一括返済したため、2台とも残っていません。買い換えについて、1台は父名義なので買い換え予定なし。1台は10年ほどで買い換え予定で、仕事をしている間は持っておきたいです。中古車で80万~100万円ほどを考えています。貯蓄から一括で購入したいと思っています。
(5)働き方について
定年は60歳、再雇用は65歳まで可能と言われておりますが、家族経営の会社のため代替わりなどでいつまで会社があるか分からない状態です。資格を持っているので、その都度転職等して、65歳、元気であれば70歳くらいまで働きたいと思っています。現在の会社は退職金が出る予定ですが、勤続年数がどこまで伸びるか分からず、いくら出るのかも不明です。
(6)父親との生活について
・父親の収入はフルタイムのパートです。年金の受け取りは70歳からを考えていますが、自営業で年金を払っていない期間もあるので、年金のみになると月で割って6、7万円ほどになるのではと思っています。また、車のローン支払いはなくなりましたが介護保険料が1万円ほどかかってくるので、雑費のトータルは変化なしです。
・父親は若干、物忘れが出てきているので認知症の不安もあって住んでいる家や土地の名義変更のタイミングを悩んでいます。父が生きている間は売却の予定はないですが、疎遠のきょうだいと連絡がつくうちにとも思ってしまい……。
・使っていない宅地建物は父親名義で、見積もりはまだですが50万~100万円程度を見ています。名義変更せず売る予定なので、あと数年以内に売却予定です。査定はまだですが、同様の土地が一昨年300万円ほどで売れています。
(7)ご相談者の今後の生活について
結婚の予定もなく、今後ひとりで生きていくと思うので、きょうだいに迷惑をかけたくない気持ちが強いです。根底にその気持ちがあるので、たまのぜいたくはボーナスからの娯楽費、もしくは月々の貯蓄をして残った分を使い、堅実に生きていきたいと思っています。映画、コーヒーが好きなので、日々の楽しみも大切にしつつ、欲張らずのんびり生きていけたらそれでいいかなと思います。
ただ、遠方に仲の良い友達がいるので、2、3年に一度は旅行をしたいです。予算的には10万円程度で、ボーナスの娯楽費をもとにしようと考えています。
父が亡くなるタイミングで実家の土地を売却し、賃貸に移るつもりです。建物は築年数の関係で無価値と思います。それもあって、今のうちに貯蓄を頑張っておきたいと思っています。
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 父親が70歳になるまでの5年間は貯蓄を頑張る
アドバイス2 5年後に残っているローンを完済して生活コストを下げる
アドバイス3 不動産売却は早めに動くこと。家族会議で話し合いも必要
アドバイス1 父親が70歳になるまでの5年間は貯蓄を頑張る
まずは、車のローンがなくなったことで、家計は少し改善できましたね。これからのマネープランとしては、奨学金の返済と父親が年金生活になる70歳以降の支出のコントロールということになるでしょうか。不確定な不動産売却については、アドバイス3で述べますが、現状では父親が70歳までは収入を得るという前提で、この5年間はしっかり貯蓄を増やしておくことが大事だと思います。
現在は毎月8万円の貯蓄ができていますが、車のローンが終わったことと、保険の見直しで毎月10万円は貯蓄に回すことができるでしょう。毎月10万円を貯蓄できれば年間で120万円。ボーナスから40万円を貯蓄できれば年間160万円です。5年で800万円を貯蓄に上乗せできます。
現在、世帯の資産は600万円の貯蓄がありますが、ご相談者個人の資産は300万円ですので、合計1100万円です。家の資産(=父親の貯蓄)は、将来的に介護が必要になった際の資金としてキープしておくようにしてください。
ひとまず、5年間で800万円を貯蓄することを目指して、生活費の予算を決めて支出をコントロールするようにしてください。
保険については、不安になる気持ちは理解できますので、割り切れたらですが、就労不能保険と変額保険は不要です。変額保険は年金代わりだと思いますが、保障額がそれほど多くはないので、その分を貯蓄でしっかり貯めておくことのほうが大事です。個人年金保険へも加入していますので、少なくとも変額保険は解約、または払い済みでいいでしょう。
アドバイス2 5年後に残っているローンを完済して生活コストを下げる
5年後、ご相談者の資産が1100万円になった段階で、有利子の奨学金と太陽光発電ローンの一括返済を考えます。5年間で返済も進んでいますので、その時点ではおそらく残り170万~180万円ほどでしょう。ご相談者の資産は900万円ほどになりますが、利息が発生している借り入れを完済できれば、毎月の支出が減り、生活コストを下げることができます。父親が70歳まで繰り下げした公的年金の受給を始めると、世帯収入は現状より5万円ほど少なくなります。毎月の貯蓄は5万円に減りますが、年間60万円、ボーナスから40万円の貯蓄が継続できれば、年間100万円です。支出をコントロールできれば、年間100万円の貯蓄が定年退職まで継続できるわけです。ご相談者が60歳になるまでの23年間で2300万円が積み上がり、900万円と合わせて3200万円。その間には車の購入などもあるでしょうが、ご相談者自身の老後資金としては、まずは安心してもいいのではないでしょうか。
アドバイス3 不動産売却は早めに動くこと。家族会議で話し合いも必要
ただし、父親の介護にどれほどの費用が必要になるのか、今の段階では分かりません。施設入居となれば、親の資産300万円と公的年金だけでは十分ではないかもしれません。ある程度の費用負担は発生することも考えられます。そうしたことを考慮すると、父親が元気なうちに、所有物件の売却は進めておいたほうが無難です。また自宅についても、どういうタイミングで売却するか次第ですが、相続が発生したあとでは、きょうだいとの協議が必要になってきます。きょうだいとの関係性までは分かりませんが、父親の介護が発生した場合、ご相談者がひとりで背負うことではありません。できれば家族会議をして、将来の話し合いをしておくようにしてください。なかなか難しいことではありますが、すべてをひとりで頑張る必要はありません。もしも、家族会議が難しいようであれば、少なくとも父親とは、この先のことを十分に話しておくようにしてください。場合によっては、相続財産についての遺言書を残してもらうことも考えておくといいでしょう。
不動産については、現時点では判断できなくとも、父親が70歳になるまでには、何らかの方向を決めておかれることを強くおすすめします。方向性が決まった時点で、再度アドバイスいたしますので、改めてご相談をお寄せください。この先5年間は現状維持で、貯蓄をできる限りすることを優先してください。
相談者「キャラメルマキアート」さんから寄せられた感想
深野先生、このたびは親身なアドバイスありがとうございました。とても具体的でなんとか自分にもできそうだと自信になりました。保険の見直しについても検討してみたいと思います。また、相談するにあたり月の収支を改めて確認すること自体がとても良い機会になりました。今後はしっかりと予算を決め、目標の貯蓄を達成できるよう日々頑張っていきたいと思います。
不動産の売却につきまして、また具体的に話が進んだ時に再度ご相談させていただければと思っておりますので、その際はまたよろしくお願いいたします。このたびはお忙しい中ありがとうございました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子