「セクハラ」と指摘される恐怖
「うちもご多分にもれずセクハラにはうるさい。以前だったら『おはよう。あれ、髪切った?』なんて軽口も言えたけど、今は言えない。おはよう、だけで止まってしまう。それが本当にいいことなのかはわかりませんけどね」ため息をつきながらそう言うショウイチロウさん(50歳)。男性から女性へのセクハラには特に気を遣うから、周りの同僚たちも女性たちに話しかけることがほとんどない。
「それでも雑談をすることはあります。ただ、先日も雑談で悪ノリした僕と同世代の同僚が、きれいにネイルした指を自慢していた若い女性社員に『きれいだね。いや、ネイルだけじゃなくて指そのものがきれいだよ』と言ったんです。彼女、本当に手がきれいだし、それが自慢のはず。
なのに周りの女性が『それ、セクハラ』と決めつけた。きれいなものをきれいだと言ったらセクハラなのか、とその同僚が思わずつぶやいてしまって場がシラーッとなりました。言われたネイルの女性はうれしそうだったんですけどね」
「セクハラ」の決めつけこそハラスメントでは
もう、プライベートなことはいっさい言わないほうがいいと、同僚と話したという。その同僚は「セクハラ、と決めつけられたこと、そのビシッとした言い方が怖かった。あれこそハラスメントじゃないのか」と落ち込んでいたそうだ。こうなるとハラスメント合戦にしかならず、その場の空気は冷えていくだけ。ああ、昭和の緩さが懐かしいと中年世代が思うのも無理はないのかもしれない。
お互いに「これって責められてる?」「これってハラスメント?」と疑心暗鬼になると、ますます関係はおかしくなる。その場で説明しあえればいいのだが、そこまでの信頼関係はできていないのかもしれない。
>「慇懃無礼ハラ」もイヤだ