結局、結婚当初から夫の言いなりになっていた
夫の顔色をうかがうつもりはなかったが……
マホさん(46歳)は、30歳直前に結婚したとき、自分が育った“不穏な雰囲気”の家庭にはするまいと強く思ったそうだ。幸い、同い年の夫とは友人付き合いが長く、お互いに相手のことはわかっているつもりだった。「私は仕事が好きだったから、結婚後は恋愛時代のような不安がなくなってバリバリ仕事をしていました。精神的に落ち着いていたので仕事が楽しくてたまらなかった。残業も多かったけど、帰れば夫がいるし週末は一緒にいられる。それが楽しみで頑張っていたんです」
ところが半年ほど経つうちに、夫の様子が少しおかしくなった。結婚前はいつもご機嫌で、マホさんの笑顔を見るのがうれしいと言っていた夫が、常になんとなく不機嫌なのだ。せっかくの週末、マホさんが「映画に行こう」「ドライブしない?」と誘っても以前のようなノリがない。
「どうしたのと言ったら、『言いづらいんだけどさ、マホ、働き過ぎじゃない? マホの会社って、女性にそこまで仕事をさせるの?』って。びっくりしました。以前から私の仕事のことは知っていて応援してくれていたはずなのに、どうして今さらそんなことを言うのかと……。
すると夫は『一緒に暮らしてみて、オレ、灯りがついていてごはんがある家に帰りたいなと思ったよ』と。仕事をしている私が好きって言ったじゃないと夫の顔を見ると、なんだかせつなそうな表情だったので言えなくなってしまいました」
「パートでもいいじゃないか」と夫は言った
その直後、マホさんは妊娠がわかった。夫との関係を修復するにはいいチャンスだと思ったと彼女は言う。もちろん夫も大喜びだった。マホさんは産休と育休を使って、もちろん仕事は続けていくつもりだった。「すると夫は『これを機会に仕事についても考えたらどうかな』と言い出した。でも現実的に共働きでなければ家庭は維持できないし、子どもも育てられない。すると夫は『パートでもいいじゃないか。子ども以上に大事なものはないでしょ』と。そりゃそうですよ。だけど比べるものではないし、私の人生、のちのち子どものせいでキャリアをダメにしたと後悔したくなかった。
とにかく臨月までは働くわと頑張っていました。職場では元気なのに帰宅するとつわりがひどい時期があったんです。夫はよくため息をついていましたね。そのため息がなんだかものすごい圧力に感じられて、気持ちが悪いのに平気な顔をして家事をこなして、通勤電車で倒れたことがあります」
それから知らず知らずのうちに、夫の顔色をうかがようになったのかもしれないと彼女は言う。
>ある日、娘が自分と夫の関係に怒った