友人の衝撃発言「ごめん」と謝られ
その後、彼はエリさんには連絡しなかった。彼女からも来なかった。だがつい最近、彼女が結婚したと仲間内から聞いた。「相手はどこぞの会社の御曹司だとか。そのとき、ふっと友人が『あいつ、オレの財布から金をとったことがあるんだよ』と言ったんです。いや、実はオレもさという話になって。友人と僕、まったく同じ手口でやられました。ふたりとも彼女とは関係をもっていない。友人は僕から見ても口の堅い男。彼女は人を選んでそういうことをしていたんでしょう。オレら、騙されたんだねとふたりで意気消沈しました」
友人は、「自分が話していれば、サトルはそんな目にあわなかったよね、ごめん」と言ってくれた。いや、自分が先だったとしても言えなかったと思うから同じだよと、ふたりは慰め合ったという。
男は「どうせ下心が……」と言われがち
「もし僕ら女性だったら、たぶん、次の日には『あの男はこんなひどいことをした』と噂になってますよね。男だからかっこ悪くて言えない、男だから女性の悪口は言えない。そんなふうに僕ら自身が囚われているのかもしれない。ある意味では被害者なんだけど、どうせ下心があったんだろうと言われるのもわかりきってるし。もちろん下心があるからホテルに行ったんだけど、誘ったのは彼女のほう。でもそういうことを言っても、男の場合は言い訳ととられてしまいがちですよね」お金だけの問題ではなく、サトルさんはもちろん心も傷ついた。彼女のことはかなり好きだったのだ。相手も同じ気持ちだと思っていた。だが、それも言うことはできなかった。男がこのくらいのことで傷ついたと言ってはいけないと思っているからだろう。
「以前、別の友人がぼったくりバーで怖い目にあったという話をしたとき、男女問わず、ものすごく盛り上がったんですよ。明らかにマヌケな失敗談だったし、彼自身がおもしろおかしく話したから。でも特定の女性にひどい目にあった話は、やはり男にはできない。その彼女がいないところで揶揄するようなことはしたくないし」
まあ、そういうかっこつけがこういう被害を生むのかもしれませんけどねと、サトルさんは恥ずかしそうな笑みを浮かべた。