だが、そういう声が表に出てこないのは、「騒いだところで、どうせ男の声など聞いてもらえない」という諦めがあるからかもしれない。男が「女から傷つけられた」と叫べないのは今の時代の趨勢(すうせい)からいえば、どこか気の毒なような……。
ホテルに泊まりお金を盗む常習犯だった女性の話が広がらなかったわけは?
彼女も自分を好きなはずだと思っていたのに
「1年ほど前のことです。友人の飲み会で出会ったエリと意気投合、後日、ふたりで食事をしたんです。もちろん、一生懸命、おいしいところを検索して予約をとり、ごちそうしましたよ。彼女もすごく喜んでくれて。店を出ると『もう1軒、行きたい。一緒にいると楽しいんだもの』と腕をからめてきたんです。脈ありと思うじゃないですか。そしてバーへ行くと、彼女は高いお酒をどんどん頼む。それもOKですよ、こっちだって勝負デートなんだから」彼女と親しくなった経緯を話してくれたサトルさん(35歳)。彼女は1歳年下だった。バーを出たあとも盛り上がり、カラオケに行こうかと彼が聞くと、彼女は「ふたりきりになりたい」とつぶやいた。
翌日が土曜日で休みだったため、彼は渡りに船とホテル街へ。部屋に入ったまではよかったのだが、彼女はそのままベッドにドサリと倒れ込んで寝落ちした。
「は? って感じでした。ふたりきりになりたかったわけじゃなくて眠りたかっただけみたいで。あんなに盛り上がって、ふたりきりになりたいとまでつぶやいて、最後はこれかよと思いました。もちろん、何もしませんでしたよ。眠っている女性に何かするほど僕は卑怯じゃないから」
朝7時、目覚めたら彼女と現金が消えていた
彼はソファに寝転んだ。自身も酔っていたためそのまま眠り込んだという。目が覚めたのは朝7時頃。周りを見渡したが、彼女はいなかった。「何だったんだろうなあと思いつつ、室内にあった自動精算機で支払いを済ませようと財布を見たら、現金がなくなっていた。食事もバーもカードで払ったから、現金は5万くらいあったはずなんです。彼女が持っていったとしか思えなかった」
その場はカードで支払ったが、あとから彼女に「もっと一緒にいたかったのに」とメッセージを送った。すると彼女からは「ごめんね、私、今日仕事だったから。昨日はごちそうさまでした。また今度」と返信があった。
「オレの財布から現金とった? なんて聞けないですよ。僕、案外お金はきちんと管理しているから財布に入っていた現金のことを忘れるはずはない。デート前に万が一現金が必要になったらと思っておろしたんですから」
それでも彼女に直接聞けなかったのは、「自分で勘違いしたくせに女性を疑った男」と思われたくなかったから。何の証拠もないのだから、彼女が「私がお金をとったと疑っている」と友人たちに触れ回られるのも嫌だった。
>友人も被害にあっていたのに……