不用意で不注意な夫
6年一緒にいても、夫の性格や心理がよくわからないと嘆くミカさん。「何が違うんだろうとときどき考えるんです。夫も私も、今は子ども最優先、それから仕事という点では一致している。大枠では一致しているのに、細かいところではいろいろ違い過ぎて疲れることが多い。娘が保育園で友だちから教わったダンスなんかをしていると、夫はやたらと怒るんです。『そんなセクシーなダンスをさせるな』って。まあ、父親だから娘が心配なんでしょうけど、誰から教わったんだと聞いて、その子の親に連絡までするというから止めました。なんだか加減のわからない人なんでしょうかね」
ミカさんから見ると、自分の関心のあることには細かいところまで気にするが、一方で関心をもてないことはスルーしがちだという。夫はあまり「ありがとう」を言わない。だから娘は夫といるとき、誰かに何かもらってもお礼を促されることがない。
「子どもは何度も同じことを言わないといけない。何かもらったりしてもらったりしたとき、親は『ありがとうは?』と促しますよね。夫はそれをしないんです。でもありがとうが言えない子にはしたくない。夫にもそれはきちんと伝えました。すると夫は『でもさ、心からありがとうって思えることは少ないよね、世の中』ですって。それは大人の判断だから、子どものうちはきちんとお礼くらい言える子のほうがいいんじゃないのと……。どこかピントがずれてるというか」
夫と自分がズレているだけの話なのか
自分もいちいち気にするのがいけないのかもしれないけど、とミカさんは小声で言った。ただ、夫のせいで「最低限の躾もできていない」と思われたくないともつぶやいた。「夫は私を『世間体ばかり気にしている』と言うんです。でも世間体だけじゃない、私は素直にお礼やお詫びを言える人間でありたいから、子どもにもそれを伝えたいんだよと言ったんですけど、夫の気持ちには届いていない」
考えてみると、年に1度程度しか会わない夫の母親も、ほとんどお礼を言わない人なのだという。会う頻度は低いが、母の日や誕生日にはミカさんがプレゼントを贈っている。それでも「受け取った。ありがとう」と連絡が来たことはない。届いているかどうか確認してと夫に頼み、届いていたよと報告を聞くだけだ。訪ねるときはお土産をもっていくが、それも「あら、どうも」ですまされてしまう。
「だから夫にとっても、ありがとうという言葉は重要ではないんでしょうね。私にはなんだか腑に落ちない話ですが」
夫が冷たい人間というわけではない。何かが違うのだ。それでも、そんな夫とこれからもつきあっていかなければならない。だから「ストレスたまります」と彼女は苦笑する。