夫が言い含めてくれたけど
その後、疲れ果ててしまったヨリコさんの身を案じて、夫が妹に「週末だけはうちの家族を優先させてほしい」と言ってくれた。義妹は「わかった」と言ったらしいが、その後もときどき義母からSOSが入った。「あるとき行ったら、義妹もいるんですよ。だけど足首に包帯を巻いていて。母親をトイレに連れていこうとしたら義妹も転んでしまったとか。でも義母は妙な顔をしている。義妹が嘘をついているんだとわかりました。義母がかわいそうになってしまって、その日は家の中を片づけたり夕食を作ったりしました。義母は『ごめんね』と涙ぐんでいて。義妹は夕方になったら包帯は巻いていたけど足を引きずることもなく歩いていましたよ」
その日はたまたま夫が仕事で出かけていたのだが、「帰りに何か買って帰るからうちの食事は気にしなくていいよ」と連絡があった。
「その後、娘から連絡があって早く帰ってきてということだったので、あわてて義実家を出ました。自転車を飛ばして帰り、ちょうど帰宅した夫と4人で食卓を囲んで……。娘からは受験に関して愚痴を聞かされましたが、家族で励まし、笑顔になった娘にホッとして」
その晩遅く、ヨリコさんは自分のバッグがどこかおかしいと気づいた。それは夫がかつてプレゼントしてくれたもので、いつも持っている、とあるブランドの大好きなバッグだった。
「寝室でどういうことなんだろうと考えていたら、夫が入ってきた。朝持って行ったときは確かにいつものバッグだったんだけど、今見たら、私のより新しい。しかもシリアル番号がない。これってバッタもんじゃない? と。義実家にしか行ってないから、もしかしたら義妹がすり替えたのかもしれないと思いましたが、そこまでは言えない。すると夫がすごい勢いで家を飛び出していきました」
ブランドもののバッグすり替え犯は?
夫は深夜に実家に突入、自分の妹が妻のバッグをすり替えたことを確認した。こんなことは両親には言えない、許してほしいと夫に頭を下げられ、ヨリコさんは夫のことも気の毒になってしまったという。「義妹はもともと甘やかされて育ったようで、自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こすような子だったそうです。大人になって社会人として日々を送っていても、やはりわがままは直らない。義妹だってブランドバッグくらい持っているのに、人のものをほしがったのか、私への嫌がらせだったのか」
どうやら後者だとわかったのは、義母がヨリコさんのことを褒めるたびに義妹が「お兄ちゃんもお母さんも、あの女に騙されている」と義妹が不機嫌になると聞いたから。だったら義妹がもう少し協力してくれれば、私は行く頻度が下がるのにとヨリコさんは言う。
「自分の親と折り合いが悪くて、兄の妻である私に親が心を寄せているから腹が立つんでしょう。わからなくはないけど、介護したあげく恨まれるのはちょっと筋が違う。夫は自分がなるべく行くようにすると言っていますが、義母は私が行かないと寂しがる。もう、どうしたらいいかわからなくなっています」
事務的に他人に任せればいいというわけではない。義母の気持ちを大事にしたいと思えば思うほど、うまくいかなくなるとヨリコさんは肩を落とした。