「SNSで見たのですが、『1929年の世界恐慌が再来し、世界中で大暴落が起きて株価が現在株価の10分の1ぐらいまで落ちる』と。どう思われますか? どんな対策がありますか?」
今回は、この質問にお答えします。
世界恐慌再来の噂、どうする?
「世界恐慌が起きて株価が落ちるのではないか?」と心配する気持ちは分かります。中原も根が悲観的なので、「景気が悪くなったらどうしよう」と、いつも心配しています。しかし、「心配だから何もしない」と考えていては、何も行動できません。大事なのは「何が危ないのか?」「何に気をつければよいのか?」と原因と対策を考えることです。
参考として2つの例を取り上げましょう。
1つ目が相談者さんのおっしゃる「世界恐慌」です。これは1929年に起きた恐慌で、日本にも広がってきました。日本の恐慌は「昭和恐慌」と呼ばれています。
世界恐慌の原因はいくつもありますが、大きなものは「生産過剰」と「投機ブーム」そして「政府の怠慢」の3つでした。
第一次世界大戦の戦後好況でアメリカは絶好調でした。好況を受けて設備への過剰投資が行われました。また、投機ブームが起きました。つまりバブルです。
まもなく、今までの「作れば作っただけ売れる」成長期から、生産能力は過剰になったことで急激に「作っても余るばかりで売れない」時代に入りました。
景気の転換は急激に来ました。とうぜん株価も下がったのですが、特にひどかったのが当時の大統領の対応でした。当時のアメリカ大統領のフーヴァーは、景気は自然に回復すると考えて、何も対策をしなかったのです。
需要に対して大きすぎる生産能力。バブルじみた株式や不動産。政治家の怠慢。これらが全て組み合わさった結果が世界恐慌だと言えます。
平成不況の原因とは何?
2つ目の事例は、ついこないだまで続いていた「平成不況」です。これは私たち日本国民にとっては馴染みが深いでしょう。平成不況の原因は世界恐慌と似ていて「生産過剰」と「投機ブーム」そして「政府の怠慢」だったと考えられます。
1990年まで、日本で大量生産・大量消費が行われていました。それに、株式市場や不動産も過熱気味でした。
そんな中、ベルリンの壁が崩壊しグローバル化が進みました。すると、世界中からものを輸入できるようになって、急激に生産能力が過剰になり、日本産のものが売れなくなりました。
日本の成長神話が崩れてからは、ガラガラと株式市場や不動産市場が崩れ、日経平均株価は5分の1になりました。結局、2013年からアベノミクスが始まるまで、20年以上も日本経済は停滞を続けました。
世界恐慌と平成不況から分かることと言えば、「大恐慌が起きるのにも理由がある」ということです。
恐慌が起きた原因は、
・いらないものを作る
・投機ブームが起きる
・不況を政府が放置する
という3点にまとめられます。
2008年の金融危機も、「サブプライムローン」という“いらない”金融商品が大量発行されたことで、質の低い不動産証券での投機ブームが起き、政府も後手後手に回った……と解釈できます。
ここまで大きな例でなくても、金融市場では「小さなバブル」が出たり消えたりしています。これらもまた、だいたい上記3つが原因です。
裏を返すと「必要なものを作り」「投機熱が行き過ぎておらず」「政府も景気刺激に意欲的」なら、「世界恐慌が再来する」と叫ぶには根拠が足りないと言えるでしょう。
「根拠なき楽観」が危険なのは言うまでもありません。しかし、「根拠なき悲観」もまた、身を滅ぼす危険につながる場合があります。
すべてのリスクを排除することはできません。僕らにできるのは「どのリスクを取るか?」を選ぶことだけです。「怖いから何もやらない」と思考や行動をストップするのではなく、「じゃあ、どうすれば安心できるだろうか?」と、前へ進むために踏み込んで考えを深めていくのが大切ではないでしょうか。