「オレは」「オレは」が止まらない夫
一昔前は、「夫が無口で困る」と言う女性が多かった。最近はあまりそういう話は聞かない。むしろ「夫が自分の話しかしない」ケースが多いようだ。ユミさん(45歳)も、先日、家庭内で起こったことを話してくれた。
「中学生の息子が、学校での先生の発言について不満を漏らしたんです。私が聞いても、それは先生がおかしいよねと思った。だけど夫は『それは立場上、しかたがないよ』と先生擁護。続けて『オレだって会社で同じことがある。部長は朝令暮改だし、そのやり方はおかしいと思っても、こっちの立場上言えない。言っても通じない』と愚痴りだしたんです。いや、そういう話じゃないし、中学生なんだから清濁併せ飲めとは言いづらい。むしろ正義感をもってほしいじゃないですか」
夫はそのまま、自分の愚痴に終始、息子は黙り込んでしまったという。あとからユミさんが、息子の話を横取りして自分の愚痴を言うのはどうかと思うよと言ったら、「息子なんかよりオレのほうがよっぽど大変だ」と怒りを込めて反論してきた。
夫の会話泥棒は止まらない
「子どもの話は聞こうよと言うと、夫は知らん顔を決め込みました。私が近所のママ友の話をしても、小学生の娘が友だちの話をしても、夫はいつも『オレだって』と言い始める。息子も娘も、最近は『オレだってが始まった』と席を立つほど。聞いてもらえなくなった夫は、ひとりでしょんぼりしています。せめて子どもたちの気持ちは読んでほしい」しかも、「オレだって」は、まったく違う方向へ飛んでいくこともある。息子がクラブ活動の話をしているとき、帰ってきた夫の耳にその話が聞こえてしまった。夫は、それまでの話を聞いていないのに、「友だちがクラブ活動に出ずに帰った」というところだけ聞き、「とんでもないな、そいつは」と怒りだしたのだ。
「あげく、『そういうヤツとは付き合うな。友だちが悪いとろくなことにならない。オレだって若い頃は……』と、まったく関係のない学生時代の友人に嘘をつかれた話を出してきて。
息子の友だちは親が病気になって、クラブ活動に出られなくなったということだったんです。だから周りでサポートしてあげたい、そういうサポートが必要かという話。聞いてもいないのに断言したあげく、全然関係ない学生時代の話を始めたから、息子は本当に呆れていました。『知りもしないで、わけのわかんない話をしないでよ』と怒って自室に行ってしまいました。娘には『またやっちゃったね、おとうさん』と言われてその場ではしょぼんとしていたけど、いつもまた繰り返す。反省してないんですね。性格なんでしょうかねえ」
この人に話せば楽しい気持ちになる、この人に話せば的確な答えが返ってくる。あるいは自分とは違う見方で考えてくれる。人はそう思うから「その人」に大事な話をするのだ。父親として、もう一度しっかり自分を見つめ直してほしいと、ユミさんは今回は夫に厳しく言い渡したという。