避けるように生きてきた母の異変
「去年の秋、久しぶりに実家に戻ってみたんです。うちから1時間半ほどでいけるんですが、私は子どもの頃から母とは仲がよくなかった。大人になってからはずっとお互いに避けていたような気がします」マナさん(42歳)はそう言う。彼女には2つ上のエリさんという姉がおり、母は露骨にエリさんだけをかわいがった。マナさんは父に懐いた。
「私が20歳のときに父が亡くなり、それ以来、私はますます母とは疎遠になりました。当時、私はすでに家を出ていたんです。母とべったりだったように見えた姉は父の死後、さっさと結婚して遠方に移り住んでしまった。母はそれからずっとひとりで暮らしていました」
どんな生活をしていたのか、マナさんはほとんど知らない。エリさんがときどき電話等で連絡をとってはいたようだ。
「去年の夏、姉から連絡があって、『少し前に母のところに行ってみたら、掃除が行き届いていなかった。気になるのでちょっと見てきてくれない?』と言われて。あんまり関わりたくなかったけど無視するわけにもいかない。血縁ってそれがイヤなんですけどね。仕事が忙しかったのですぐには行けなかったけど、一段落したときに渋々、行ってみました」
門は壊れ、室内も異常な状態で……
東京近郊の一軒家だが、門が壊れていた。行くと連絡していなかったのだが、チャイムを鳴らすと母が出てきた。「玄関の電球が切れていて暗いし、姉が言うとおりあちこち埃だらけ。リビングに入ると、新聞が散らばっている。『パート、まだやってるの?』と聞くとやめたという。70代後半ですからやめても不思議はないけど、毎日何をしているのかと尋ねたら、別にって。あまり近所とのつきあいもないみたい」
母の腰が曲がっているのに気づいた。立ち上がるのも歩くのも、何かにつかまらないとむずかしいようだ。足腰が丈夫だったはずなのに、コロナ禍で家から出ないでいるうちにすっかり弱っていたらしい。
>母が倒れたのを機会として、姉に宣言をした