いろんなことから解放される60代は、人生で一番楽しい時期
――歳を重ねると、ポジティブに考えられないことが増えてくるように思うのですが、なぜ60代が人生の黄金期になるのでしょうか。和泉さん:60代は、いろんな役割から解放されて幸せになるんです。私がそう考える理由を次の図を見ながらお話ししていきますね。
人生100年時代のロードマップ(出典:和泉昭子著『定年後のお金、なんとかなる超入門(KADOKAWA)』)
こちらは、30代から老後に向けての人生のロードマップになります。30代は、仕事をしてキャリアを磨いたり、家族を持ち、資産形成を始めたりする人もいるでしょう。また、家を買ってローンを返すために、一生懸命働いている人もいると思います。
40代になると、役職が上がって収入が増えますが、その分責任も重くなり、大変になることも増えたりします。
さらに50代になると、子どもの教育費の負担が重くなります。最近は少子化対策で、国からのサポートが増えるという話も出ていますが、結局大学の進学費用などは、自分たちで準備しなければなりません。また、親の介護が必要になる人も多いでしょう。
60代になって、子育てや介護が落ち着いたり、定年退職を迎えたりして、様々な責任から解放され、ようやく自分の人生を自分自身でコントロールできるようになるのです。60代であれば、まだ気力も体力も十分。やりたいこともやれて、すごく幸せな時期なのです。
黄金期に向けて気持ちのギアチェンジを!
――60代が黄金期と聞くと、年齢を重ねることに前向きになれそうです(笑)。では、人生の黄金期を楽しむために、どんな準備をしておくとよいのでしょうか。和泉さん:まずは、自分自身の気持ちをギアチェンジすることです。今までどんなときでも“家族中心”、“仕事中心”に考え、無意識に諦めてきたことも多いのではないでしょうか。でも60代からは、少しずつ“自分中心”の生活に変えてみてください。
そして、何をやりたいか、どんな生活したいかを考えることが大切です。さらに、それをどういうふうに実現するのか、また実現するにはどのくらいお金が必要かなど、プランを立てることも重要です。そこで、私が提案しているのが“前厚(まえあつ)マネープラン”です。
お金は75歳までにやりたいことに使う
――“前厚(まえあつ)マネープラン”とは、どんなプランなのでしょうか?和泉さん:私の実体験や健康寿命などを踏まえ、60代から75歳ぐらいまでにお金を厚く(多めに)配分して、やりたいことに使っていきましょう!というプランです。
お金の使い方を「前厚」にしよう!(出典:和泉昭子著『定年後のお金、なんとかなる超入門(KADOKAWA)』)
一般的に老後のマネープランを考える場合、60歳から90歳までの30年間くらいを想定し、1年単位でいくら必要かを考えます。でも実際、健康寿命から見ても、75歳を過ぎると気力や体力などが衰え、アクティブに動けなくなる可能性があります。
――そうするとやはり、75歳までの元気なうちに、やりたいことをやって、お金を使っておいたほうがいいというわけですね。
和泉さん:そうです。私も少し前まで親の介護をしていたのですが、その時に痛感したことがあります。
それまでは「老後」と、一括りにしていたのですが、老後も75歳まで(老後の前半)は、結構元気で時間もあって、好きなところに行ったりしている人も多いです。だけど、75歳を超えると(老後の後半)、行ける場所や食べられるものも限られてきて、だんだんお金を使わなくなります。
だから、元気でいられる60歳から75歳までの老後の前半に、お金を厚めに配分する「前厚マネープラン」をおすすめしているのです。そうしないと、使えないまま終わってしまうこともありますから。
とはいえ、パーっと無計画にお金を使うのではなく、ちゃんと老後の後半で必要になるかもしれない医療・介護費などは考慮するようにしてくださいね。
【和泉昭子さん出演!動画はこちら】
教えてくれたのは……生活経済ジャーナリスト・和泉昭子さん
ファイナンシャル・プランナー(CFP)/人財開発コンサルタント
大学卒業後、出版社・放送局を経て、フリーのキャスターに転身。NHKを中心に、ニュース・情報番組を担当。2007年マネー&キャリアの支援会社「株式会社プラチナ・コンシェルジュ」を起業。現在は、テレビ・ラジオ等への出演や講演活動などを通じて、マネーやキャリアに関する情報を発信。著書「定年後のお金、なんとかなる超入門~インフレ時代のセカンドライフ(KADOKAWA)」など。