義姉は自分の離婚を告白した
その夜、夫は塞ぎ込んで夕飯のときにはほとんど口を開かなかった。いつものおちゃらけた雰囲気は封印したようだ。だがアキさんは、それはそれで少しかわいそうな気がしていた。「さっきはごめん。言い過ぎたかもしれない」
子どもたちが寝静まったあと、口火を切ったのは義姉だ。
「『あなたたちには言ってなかったけど、私、離婚したの』と義姉が急に告白したんです。義兄は仕事の関係で来られないと言っていたけど、どうやらそれは嘘で離婚したために不在だった。義姉は両親宅からすぐ近くに住んでいたんですが、今は子どもと一緒に両親宅に越してきたそうです。その離婚の原因というのが義兄のモラハラだった。
義兄は結構な頻度で浮気をする人で、相手ができるたび『きみも昔は細かったよね』『どうしてこうなっちゃったのかな』とお腹をつままれたりしていた。挙句『女は若いほうがいいよなあ』としみじみ言われたことがあって、もう精神的に耐えられないと離婚したんだそう。
義姉は『あんたの物の言い方で、別れた夫を思い出してイライラした。そういう態度を続けていると、あんたもそのうちアキさんに離婚を言い渡されるわよ。妻だから何を言ってもいいというわけじゃない。妻だからこそ気を遣ってあげなさい』と義姉は夫に説教していました」
ハッとさせられた義母の言葉
義母も隣で頷いていた。アキさんはさらに内心で義姉と義母にガッツポーズを贈ったという。「そのあと女3人になったとき、義母と義姉に『あの子は昔から調子に乗っていろいろ言うけど、人を傷つけることもあると思う。そういうときは遠慮なく怒ったほうがいい』と忠告されました。人を傷つける毒舌はよくないですもんねと言ったら、『あなた自身も傷ついていいわけじゃないのよ。自分は我慢できるけど他人にはダメという問題ではない。あなたも夫に大事にされる権利があるんだから。それに父親におとしめられている母親を見たら、子どもが傷つくの』と義姉に言われました。その言葉にはハッとさせられた」
ああいうお父さんだからしょうがないねと、アキさん自身、ときどき娘に言っていたのを反省した。冗談は冗談として受け止めながらも、人を傷つけている言葉ならきちんと指摘しないと、それは娘のためにもならないのだと。
「夫も少しは反省したみたいです。それ以来、容姿に関する言葉は言わなくなりました。私が言い間違いをしたとき、ツッコんでくるくらいのことはいいんですよ。そのツッコミがおもしろいなら。ただ容姿や年齢などへのツッコミはやはりこちらも不愉快ですからね。それについては正直に『はい、今のはレッドカード』と言うことにしました。娘も『ママがはっきり言うようになっていいと思う』と言ってくれています」
娘はやはり怒らない母に、モヤモヤしたものを感じていたようだ。黙っていればいさかいが回避できると思うのは「単なる逃げだ」とアキさんはいたく反省している。