仲良し夫婦だった夫の意外な過去
「夫はとにかくまじめな人でした。うちは共働きでしたから、夫は子育ても家事も積極的に自分からやっていましたね。子どもたちは私より優しいパパに懐いていたくらい。だからこそ、今回のことは子どもたちもショックを受けています」涙ながらにそう言うのは、ユリコさん(46歳)だ。夫のシンペイさんとは大学時代の同級生。仕事を始めて3年後の26歳のときに結婚した。現在、18歳と16歳、ふたりの息子がいる。お互いしか見えていない人生のはずだった。
「夫婦仲もよかったと私は思っています。週末はいつも一緒だったし、子どもが中学生になってからは近所に住む私の母に頼んで、平日の夜、夫と待ち合わせて映画を観たり食事をしたり。子どもたちからは『オレたちを放っておいてデートだなんて』とよくからかわれた。夫はそのたびに『きみたちも、一生愛し合える女性を見つけるんだな』とニヤニヤして」
夫とはずっと恋人であり同志であり親友でもあった。いつでも対等に話ができた。くだらないダジャレを言い合うかと思えば、まじめに政治の話をすることもあった。家族で麻雀卓を囲んで、年末年始は徹夜で遊んだ。
「シンペイがいない人生なんて考えられなかった。これからは健康に気をつけなければと、彼は気を遣っていました。だから秋に、突然、病院から電話がかかってきたときは心底驚いて……」
夫は通勤ラッシュで混雑する朝の駅で倒れた。脳出血だった。救急搬送されたが、意識が戻らないまま数日後に亡くなった。
「その日も一緒に駅まで行ったんです。乗り換えのために降りていく夫と目を見交わしてニコッと笑って別れた。それが最後です」
夫の通夜に不審な女性が現れた!?
どんなにつらくても儀式は粛々と進んでいく。体から力が脱けて何もできないユリコさんに代わり、葬儀社と長男が話を進め、2日後に通夜が行われた。「私たちは座ってじっとしているだけ。多くの人が来てくれました。夫や私の友人たちはみんな号泣していて話もできない。私だけじゃなく、周りの人たちも悲しんでいることが、ますます私をつらくさせました」
そこへ現れたのが20代後半とおぼしき女性だった。喪服ではないグレーのワンピースを着た彼女は走り込んできて棺にしがみついた。異様な雰囲気だったから、手伝ってくれている夫の会社の後輩や友人たちが身構えるのがユリコさんから見えたという。
「彼女、ギャーギャーすごい声で号泣していました。『シンちゃん、どうして私を置いて逝ってしまったの』って。夫の友人が引き離そうとしたけど座り込んで泣いて。まあ、ただの知り合いではないだろうというのはすぐわかりました」
彼女は、その女性に近づいていった。
>妻が号泣する“不審な女性”に声をかけると