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『翔んで埼玉』シリーズが大人気の理由! ポイントは奇妙奇天烈な世界観と地元愛の「ギャップ萌え」

魔夜峰央の原作漫画を映画化した『翔んで埼玉』は2019年に公開され大ヒット。2023年に公開された続編も絶好調です。その人気の要因は何なのか? 映画ライターの筆者が考察してみました。※サムネイル画像:(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

斎藤 香

執筆者:斎藤 香

映画ガイド

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

魔夜峰央の原作漫画を映画化した『翔んで埼玉』は2019年に公開され大ヒット。2023年に公開された続編『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』も絶好調です。その人気の理由は何なのか? 映画ライターの筆者が考察してみました。
 

身近な地元ネタをド派手に見せた『翔んで埼玉』

『翔んで埼玉』は1980年代『花とゆめ』(白泉社)の別冊に連載された魔夜峰央原作の少女漫画。魔夜峰央といえばギャグ漫画『パタリロ!』が有名ですが、本作も世界観は同じ。奇妙奇天烈な設定、個性的な登場人物によるシュールな世界の中で強烈なギャグを展開させます。魔夜峰央の世界観をしっかり映像化に落とし込んでいます。
 
 “ダサイたま”と言われていた埼玉をより強くディスりながらも、埼玉を救うための革命を起こす登場人物たち。ぶっ飛んだ舞台設定とあふれる地元愛。そのアンバランスさがこの映画の魅力なのです。
 

関東対決から関東VS関西へ! 映画はスケールアップ

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

『翔んで埼玉』(2019)は、東京へ行くのに通行手形が必要なほど都民から虐げられてきた埼玉県民が、名門・白鵬堂学院の転校生・麻実麗(GACKT)と彼に心を奪われた生徒会長・壇ノ浦百美(二階堂ふみ)、埼玉解放戦線のメンバーと共に、関東対決を制し、手形の撤廃を実現させる物語。
 
『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』(2023)は、手形が撤廃されて埼玉県に幸福が訪れたのも束の間、「埼玉県人は横のつながりが薄い」という問題が勃発。麗は「越谷に海を作ろう」と、和歌山の白い砂を目指す旅へ。しかし、関西が大阪府知事(片岡愛之助)に支配されていることを知り、滋賀解放戦線の桔梗魁(杏)と共に、中心人物の大阪府知事たちの暴走を止めることに。
 
第1作目は関東での戦い、2作目は関東VS関西の戦いへと発展していくのです。 
 

おもしろポイント1:誰もが共感できる「地元愛」

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

“壮大な茶番劇”と銘打っているように、『翔んで埼玉』の魅力は、その大げさな舞台設定、個性が強すぎる登場人物にある……けれど、このシリーズがヒットした一番大きな要因は、地元愛の深さ。
 
第1作目は冒頭から、とことん虐げられた埼玉県民が出てきます。服はボロボロ。百美には「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」と言われる始末(麗と出会う前の百美は激しい埼玉差別者という設定)。
 
でも埼玉をディスるほど埼玉が注目され、その魅力が広がっていく。そして千葉、群馬なども参戦してマウント合戦が展開されるのです。その県の出身者は「そうそう!」と共感し、地元が映画に登場しなくても「私の地元は~」とつい考えてしまう。そんな風に故郷をついつい思い出してしまうところがおもしろいと思うのです。
 

おもしろポイント2:GACKTのキャスティング

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

大ヒットの要因の一つには“キャスティング”もあります。本作はクセの強い登場人物ばかりですから、演じる俳優も濃い目が条件。でも高校生の麗にGACKTを抜てきしたのはすごい人選だったと思います。そして『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』では、最大のライバルに片岡愛之助を起用。その妻役に藤原紀香というリアル夫婦が登場したのにもビックリですよ。
翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

また1作目から続けて出演している二階堂ふみさん、2作目に出演している杏さんが演じる役は男子! 美形の男子を女性に演じさせるキャスティングにより、ボーイズラブ風味は薄れましたが、男装の麗人ぶりがこの映画にピタッとハマっています。
 

おもしろポイント3:効果大のサイドストーリー

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

滋賀の象徴として登場するとび太。(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

原作漫画にはないのが、2作品で描かれるサイドストーリー。いずれもカーラジオで家族が『翔んで埼玉』の茶番劇を聞くという設定。そして2作品とも車にいるのは夫婦と娘。娘の彼氏(2作目は結婚して夫となっている)は不在で、映画の最後に駆け込んでくるという設定はマスト。

つまりこのサイドストーリーの家族が観客と同じ立ち位置で劇中劇に夢中になっているというわけ。何しろ本編がかなり濃いので、サイドストーリーは箸休め的な存在。これがいいアクセントにもなっているのです。
 

おもしろポイント4:舞台を関西に移しても揺るぎない埼玉愛

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

2作目で関東から関西へと舞台は映りますが、埼玉を忘れたわけではありません。百美は麗と関西遠征はせず、埼玉に残り、争いが止まない大宮VS浦和など、埼玉県内のマウント争いを鎮静化させようと大奮闘するのです。そして、最後に埼玉のある土地のシンボルである“アレ”が、関東VS関西の戦いに参戦して、いい仕事するんですよ!
 

だから『翔んで埼玉』シリーズは人気

いつの時代が分からない壮大な茶番劇が実は、舞台となる土地の名所、名産品などにスポットを当てているのもこの映画の魅力。みんなの心にある“地元愛”を蘇らせているのです。実家のある風景を思い出したり、「ちょっと帰ろうかな」と思ってみたり。ド派手な映画に見えて、見終わった後は心がほっこり。そのギャップもたまらない作品です。
 

『翔んで埼玉』(2019)

原作:魔夜峰央『このマンガがすごい!comics翔んで埼玉』(宝島社)
監督:武内英樹
出演:GACKT、二階堂ふみ、伊勢谷友介、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香、間宮祥太朗、成田凌、加藤諒、益若つばさ、武田久美子、岡山天音、竹中直人、麿赤兒、中尾彬、京本政樹
 

『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』(2023)

原作:魔夜峰央『このマンガがすごい!comics翔んで埼玉』(宝島社)
監督:武内英樹
出演:GACKT、二階堂ふみ、杏、加藤諒、益若つばさ、堀田真由、くっきー!(野性爆弾)、高橋メアリージュン、和久井映見、アキラ100%、朝日奈央、天童よしみ、山村紅葉、モモコ(ハイヒール)、川埼麻世(※正式にはタツザキ) 、藤原紀香、片岡愛之助
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