人間関係

共働きの子育て世帯にのしかかる「老齢の親」問題…近居の80歳ひきこもり実母、どうすれば?

父が亡くなった後、母は娘の家の近所に越してきた。当初は母を頼ることができてホッとしたのだが、コロナ禍後に母はめっきり老け込み、近所に知り合いもいないことから家にひきこもり衰えが激しい。今後のことを考えると気持ちが暗くなる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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まだ介護まではいかないものの、親があまり外を出歩かなくなり、どこか寂しそうにしていると気にはなるもの。ところが話を聞いてあげられる時間はそうはない。誰も彼もが忙しくしている今、そういうことで気が重いと感じている人も少なくない。
近所に越してきてくれたはいいものの、衰えてきた母の面倒をみることに

近所に越してきてくれたはいいものの、衰えてきた母の面倒をみることに

孫育てを機に近距離別居を選択した実母

「うちはずっと共働きなんですが、年子で子どもが生まれたころは母にすっかり頼っていました」

そういうのはアヤカさん(45歳)だ。現在、14歳と13歳の子がおり、同い年の夫と4人で暮らしている。

「当時、すでに母は父を亡くして、私たちの自宅から1時間半ほどかかる実家でひとりで暮らしていました。手伝いに行くよと言ってくれたのですが、自宅で寝泊まりしてもらうとお互いに気を遣うので、母には目の前のワンルームマンションを借りて、そこに住んでもらいました」

そのうち母自身が、自宅を売ってこっちに引っ越してくると決断した。家が狭いから一緒には住めないけど、それでもいいのかと念を押すと「それでもいい」と言った。それなりにお金も持っているようだし、好きなように暮らしてもらえばいいとアヤカさんは考えていた。母は「孫の世話が何より楽しい」と、ずっと力になってくれたので、アヤカさんも家族旅行には母を連れていったし、ときには母をおいしいレストランにつれていったりもした。

孫は成長、80歳の実母は衰えて

現在、母は80歳になる。コロナ禍で家から出なくなり、その間にかなり足腰が衰えた。子どもたちは大きくなって、部活に塾に友だちとの交流にと忙しい。夫もアヤカさんも、今は仕事で中核を担っているから、在宅ワークと出勤を繰り返しながらひたすら仕事をしている状態だ。

「それでもある程度、準備しておけば子どもたちが夕飯を作ってくれるようにもなりました。子どもたちのためにも自分で作らせたい。それに私も夫も残業はなるべくしないようにしているので、家族で食事はとる時間には帰れる」

ただ、母が毎日ひとりで自分の部屋にいるので、最近は夕飯だけは一緒にとるようになった。洗濯や掃除も気になるので2日に1回はアヤカさんが母の部屋に行って家事をしている。

「夕飯をとったあと、母を送りがてら部屋にいって家事をする。ただ、私も自宅が気になるし、そうそう母と一緒には過ごせないんです。夜、仕事をしなければいけないことも多いし。ただ、そういうときに限って母は昔話を始める。これが長いし、何度も聞いた話だし。わかってるんですよ、はいはいと聴くのがいちばんいいことは。でもそうもできないのが実情。母には外に出るように言っているんだけど、友だちもいないし、どこへ行けばいいかわからない、と」

こっちに来なければよかったと母はときどき涙声になる。かわいそうだと思うものの、「来ると決めたのは自分でしょ」と思わず言ってしまう。そして冷たくしたことを後悔するのだという。

「せめてデイサービスにでも行ってもらおうと介護認定を申し込んだところです。母が老いて、生きる気力をなくしているのを見るのはつらい。だけど、私には私や子どもたちの生活がある」

要介護の前の段階、つまり体に特に異状はないが、老いて気力が衰えた親をどうしたらいいか。そういう話は介護問題でもなかなか語られることがない。

>近所にいるとはいえ、一人暮らしは限界間近
 
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