10歳年下の合理的な妻
「僕は妻がはっきりものを言うところが好きで結婚したんです。嘘がなくて率直で。10歳年下だったから、なんだかんだ言っても最終的にはイニシアティブを握る自信はあったはず……なんですけど」苦い表情でそう言うのは、ケンイチさん(43歳)だ。結婚して7年が経つが、ひとり娘をもうけてからの妻の「快進撃」には、びっくりするやらたくましいと感心するやら、だそう。
「仕事も続けながら、家事に育児にと頑張る妻を見ていたら、自分が口を出さないほうがいいんじゃないかと思えてきたんです。僕が何かやろうとしても、『あなたがやるより私がやったほうが早いから』と言われてしまう。そうなると、積極的に家事をやろうと思えなくなります」
たまには料理をとキッチンに立とうとすると、「せっかくきれいにしているんだから、ちゃんと原状回復してよね」と言われてしまう。「パスタ、食べたくない? 結婚前は喜んでくれたじゃないか」と甘い恋人時代を思い出させようとしても、「あの頃はね。今はダイエット中だからいらない」と言われるのがオチ。
「妻の邪魔にならないよう、ひっそり暮らすのがいちばんかな、そのうち僕の出番もあるかもしれないしと思ってやってきました」
ひとり娘は5歳になった。今は娘との会話を楽しむのが日課だ。娘の思考回路が日々、しっかりしていくのがとても興味深いという。
心底がっかりした妻の言動
「半年ほど前、帰宅したら妻が娘と食事をしていたんです。僕は自分の分をよそって食卓についた。なんてことない会話をして、妻が立ち上がってキッチンに行くとき、なんかおかしいと思ったら足を引きずっている。どうしたのと聞くと、仕事で外出した際に捻挫したというんです。だったら早く言えよ、と思わず声を大きくしてしまいました。ひとりで頑張るのもわかるけど、連絡くれれば定時で飛び出して娘を保育園に迎えに行くよ、食事の支度だってするよと。きみは僕を無能だと思っているようだけど、もっと頼ってくれよと心から訴えたんです。妻はじっと僕を見ながら『ありがとう』って。だけど翌朝、娘を送っていくと言ったら『いいのいいの、私が行くから』と。なんとタクシーを呼んでいたんですよ。心底、がっかりしました」
妻はタクシーで保育園に娘を送り、そのまま駅まで行って電車で通勤したのだとか。夫婦で家庭を作っている実感がないとケンイチさんは肩を落とした。
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