食べ物への知識不足を責められて
もめごとの後の報復にもやっていいことと悪いことがあるのでは?
思わずムッとしたヒロシさん、「だったらなくならないよう、きちんとストックしておけばいいじゃん」と言ってしまった。
人間だからミスはある、あなたは私のミスを許さないのかと詰め寄られた。
「いやいや、だったら僕のミスも許してよとおどけたんですが、妻はそれきりムスッとして口もききませんでした」
「理由なき不機嫌」はやめてほしい
ヒロシさんは家族の中で感情をこじらせている人がいるのが異常に苦手だという。幼いころ、父親の「理由なき不機嫌」に困惑したり苦しんだりしている母を見ていたからだ。父は突然、機嫌を損ねると数週間、口を開かないこともあった。「その時期にたとえばおかずが少ないなどの不満があると、何も言わずに皿を投げつけたりするんです。僕は床に散らばった魚を食べたこともある。だから不機嫌な人が怖くてしかたがない。妻はそれを知っているのに、わざと口をきかなくなったんです。以前はそんなことしなかったのに……。僕が言葉を尽くして謝り倒して、ようやく3日目に言葉をかけてくれました」
それが彼のトラウマだとわかっていて、そこを突いてくるのはあまりにも意地が悪すぎる。
「例の買い物がよほど妻の機嫌を損ねたんでしょうね。理由がわかっているからまだいいけど、今後、妻が理由もわからず不機嫌になることがあったら、僕は本当に怯えた日々を送ることになると思う」
それだけはやめてほしいと改めて妻に申し入れた。妻は「わかった」と言ったが、それが守られるかどうか彼は戦々恐々としているようだ。言いすぎたりケンカになったり、夫婦には日常的にさまざまなことがある。だが、相手を追いつめ、トラウマを責め立てるような言動は、夫婦の間の決定的な溝になりがちだ。せめて逃げ場を残してほしいと、ヒロシさんは願っている。