娘に冷たい目で反論される
このところ長女は、アスカさんの言うことに理屈で反論してくる。「今年の夏、長女が化粧をして出かけようとしたことがあったんです。薄化粧ならともかく、けっこう派手だったので、思わず注意しました。若くて肌がきれいなんだからそんなに濃い化粧をしなくてもいいんじゃないのとやんわり言ったんですよ。すると娘は『おかあさん、肌がきれいだからこそ化粧が映えるの。年食ったらそれなりに薄化粧でいいのよ。今しかできないメイクをしたいの』って。わかるんですけどね、なんとなくこっちもムッとしちゃって。すると娘は『嫉妬してる? 母親が娘に嫉妬するのはみっともないよ』と。夫に言ったら苦笑していましたけどね。年のいった母親をバカにしているんでしょうか」
バカにしているわけではなく、自立していく過程にあって思わず反論しただけなのだろう。だが、心のどこかで母親の生き方を否定したくなっている可能性もある。
「うちはどちらかというと、夫のほうが家事分担が多いんですよ。私はきっちり勤め人ですが、夫はフリーランスなので。娘の目から見ると、夫の生き方のほうが柔軟に見えるんでしょう。おかあさんは堅物すぎて話にならないと夫に言っていたこともあるようです」
まじめに生きてきて何が悪いと言いたいところだと、アスカさんは不快そうにつぶやいた。そんな娘だってあと5年も経てば、考え方がまったく変わっているかもしれない。親から見れば若さが羨ましくても、若さの渦中にいるときはそれなりにプレッシャーも不安もあるものだ。
結局、自分で自分を苦しめている
「若い今がどんなに貴重かわかってないんですよね。せっかくそれをわからせようとしているのに反抗ばかりして……。でも私自身が若さに嫉妬しているところもある。だからついつい、『若いから許されるということもあるのよ。あなたはまだ人間としては半人前だからね』と意地悪を言ってしまうことがあるんです。世の中を甘く見るなということなんですが、娘には見抜かれていて、おかあさんは意地の悪いことばかり言うと言われてしまいました」「うるさいことは言わない」と言いながら、アスカさんはけっこう娘にあれこれ干渉しているようでもある。
「今後、恋愛だの結婚だのとなったら、ますます娘に嫉妬してしまいそうです。私自身が自分の思ったように人生を歩んでいないということなのかなと考えると、ますます妙な焦りばかりが出てきてしまうんですよね」
子どもの成長は、自分自身の人生を振り返ることにもつながる。それが自分を苦しめているのなら、今から「変わっていく」しかないのかもしれない。