夫に「尽くす妻」をやめた女性も……
一方で、子どものことと自分の仕事で手一杯になり、「夫に尽くす」ことをやめた女性もいる。「夫は甘えん坊というかなんというか。コーヒーを飲むときも私がミルクや砂糖を入れてあげないとダメだし、バナナの皮さえ自分ではむかない。出かけるときは自分の財布を私に預けるんです。何か買うときは『恭子ちゃん、財布財布』って。だったら自分でもっていればいいのに。携帯電話すら預けることがあるので、片時も離れられない」
最初はそれがうれしかったと、ハナさん(39歳)は言う。だが30歳で結婚して、この9年間で3人の子を産み、夫の両親が経営する店を手伝っていると、夫の世話まで手が回らなくなった。当然のことだ。
「夫はサラリーマンなんですが、夫の両親が近くでお店を経営していて人手が足りないからと手伝い始めたら、どっぷり経営に加わることになってしまって。夫はそんなのやめちゃえというんですが、急に辞めるわけにはいかない。いちばん合理的なのは、子どもと化した夫が大人になることだと気づいたんです(笑)」
結果、ハナさんは過剰に世話を焼くのをやめた。着ていくシャツやネクタイは自分で選んでもらう、ネクタイも自分で締める。帰宅したら洗濯は洗濯物のかごに入れる。食事がすんだら皿をキッチンに運ぶ。それだけでもずいぶん楽になったというから、どれだけ夫が何もしなかったかがわかる。
納豆の辛子を「ママ、開けて」という夫
「以前は毎日、夫をマッサージしてたんですよ。気持ちよく寝られるというから。だけどマッサージしているこっちが疲労困憊しているので、それもやめました。休日など時間があるときだけにさせてほしいと言って。最初は不機嫌だった夫ですが、私があるとき過労で倒れてからは少し気持ちを切り替えたみたいですね。最近は自らお金を払ってマッサージのプロにやってもらっているようです」それでも夫はときどき、たとえば納豆についている辛子の小袋が開かないと「ママ、開けて」と言う。子どもが言ったのだと思って振り返ると夫だ。それを見るとがっかりするという。
「私は尽くす妻というよりは、夫にとって世話を焼いてくれるママなんでしょうね。夫婦ふたりで3人の子を見るのも大変なのに、私はひとりで夫含め4人の男の子のめんどうをみなければいけないんだなとときどきため息が出ます」
今のところ、夫への嫌悪感はないとハナさんは言うが、近い将来、ふとした瞬間に「こんな夫と一緒にいなければいけないのか」と思う日が来るかもしれない。一方だけに負担がかかる関係はいつか大きな亀裂を生む可能性があるのではないだろうか。