人間関係

ある日届いたラーメン10人前の嫌がらせに→夫「仕事上のライバルが…」、妻「ああ、不倫相手ね」(2ページ目)

頼んでもいないラーメン10人前が配達された。顔面蒼白な夫は必死の形相で言い訳を並べたてるのだが、その様子に妻はピンときた。それにしても、嫉妬心をあり得ない言動に変える人はいるものだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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夫の相手がいきなり……

1時間後、夫の不倫相手がやってきた。

「玄関を開けるといきなり『ラーメンの件、申し訳ありませんでした』って。お詫びですとケーキの箱を差し出したので、『いただくつもりはありません。持って帰って』と言ったら、いきなり箱ごと私に投げつけてきたんですよ。

かわしはしたけど、箱が壊れて壁にケーキがべったり。さすがに夫も『いいかげんにしなさい。エミ、110番』と。すると彼女は笑いながら、『奥さんもエミって言うんですか。私もエミなんですよ。奥さん、ダンナさんはエミという名前なら誰でもいいんじゃないですか』と言って走って逃げて行きました」

警察に届けようと思ったものの、彼女も将来のある身。やはり翌日、夫は上司に相談することにしたという。

「翌日、夫が出勤すると、例の彼女は朝早く会社に来て辞表を置いてそのまま退職したというんです。夫は上司への相談をとりやめ、様子を見ると。でも怖かったですね。娘に何かされるのではないか、家に火でもつけられるのではないかと不安でたまらなくて。結局、警察に相談しました。ケーキの件も壁にべったりクリームがついているところを写真に撮っておいたので、それも見せました」
 

娘にもしものことがあったら……

警察には相談だけで、相手への連絡はしないでもらった。だがエミさんは自身も仕事をしているだけに娘のことが心配でならなかった。とはいえ、事情をすべて近所に話して回るわけにもいかない。

「私、兄がふたりいるんですが、長兄の息子が東京でアルバイトをしながら人生を考え直したいと言い出して、うちの近くのアパートでひとり暮らしをすることになっていたんです。早めに来て、しばらく娘のボディガードをしてもらえないかと頼んだら『いいよ』と。彼は昔から柔道をやっているので、いざというときも頼りになる」

娘の登下校、学童への送迎などを彼に頼んだ。夫も極力、残業をせずに早く帰ってくるようになった。娘はエミさんの甥から護身術も習ったという。

夫は、浮気相手が親しかった同僚などから、それとなく彼女の行方を聞き出した。

「実家に帰っているとわかったので、一安心しました。ただ、いつ出てきて何をしでかすかわからないので、いざというときは実家と連絡をとる。そのときはあなたも刺し違える覚悟でいてよと夫に言ったら、『人は見かけによらないよね』と沈んでいました。女を甘く見るからそういうことになると怒ったんですが、よく考えたら、私もバカにされたんだなと。自分の浮気で妻子に迷惑をかけるってどうよと言うと、夫はごめんって。妻はこういうことを許さなくてはいけないのかと、なんとなくモヤモヤしたんですが、当時は娘のことばかり心配していたので、自分の怒りまでは頭が回らなかった」

結局、何事もなく今に至っているが、逆に今になってエミさんは自分の怒りに目が向くようになった。

「夫は気軽に浮気したのかもしれませんが、世の中にはどんな逆恨みをする人がいるかわからない。肝に銘じておけと言いました。あれから夫は私の言いなりですが、それもなんだかモヤモヤする要因ですね」

忘れたいことを忘れられるとは限らない。これからも名前をつけがたいこの気持ちを抱えていかなければならないとエミさんは釈然としない表情で言った。
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