母子家庭育ちの彼と結婚を決意したが……
「私、義母に『私の息子を盗った女』と言われたんですよ」苦笑しながらそう言うのは、カナさん(38歳)だ。36歳のとき、32歳の男性と結婚した。彼とは仕事で知り合い、2年間付き合っていたが、彼女自身は結婚には躊躇していた。
「彼が母ひとり子ひとりで育ったのを知っていたし、結婚するなら同居になりそうだったし。私は全力で愛してくれる彼に惹かれていたけど、つらい結婚をするくらいなら独身のほうがマシだと思っていた。だから彼にもそう言ったんです」
すると彼は、母親はまだ50代だし仕事もしているから同居する必要はないと言った。同じ電車の沿線で20分ほどで行き来できる場所に新居を見つけて一緒に住み始めた。もう同棲しているからという既成事実を作ってから結婚という話にもっていったのだ。
「今思えば、そういう既成事実を作らなければ結婚したいと言えなかったんですよね。でも彼は一生懸命やってくれたと思います。ふたりで彼の母親に会いにいくと、すでに同棲していることは知っていたので、『結婚するの?』と聞かれました。そのつもりと彼が言うと、『こういう人と結婚するなんて。何のために苦労してあんたを育てたんだろう』と私の前で大きなため息をつきました。彼は『彼女は素敵な人だよ。僕が先に好きになったんだ。お母さんは僕が幸せになったほうがいいでしょ』と穏やかに言ったんです」
「盗人みたいなものよ」と義母は言う
彼がトイレに行って席を外すと、義母はカナさんをじっと見て「あなた、私が大事に育てた息子を勝手に奪っていくんだからね。盗人みたいなものよ。それを忘れないでよ」と言った。忘れないでどうすればいいんですかとカナさんは尋ねた。義母は怒りで顔を赤くしていた。「私は昔から理不尽に意地悪なことを言う人に耐えられないんです。だから義母だろうと実母だろうと、筋が通らないことを言うなら闘うしかないとスイッチが入ってしまった。そこへ彼が戻ってくると、義母はいきなり泣き出し、『この人、意地が悪いわ』って私を指さすんです。子どもじゃあるまいしと黙っていたんですが、結局、その日は気まずいまま食事もせずに帰りました」
自分が愛する息子を、自分よりずっと若い女性に盗られる感覚なのだろう。カナさんは重苦しい気持ちになった。
>ある日言い争いの末、義母からビンタをされて