離婚も考えていたけれど……
夫に「一緒に暮らせない」と言った時点で、彼女は何も考えていなかった。ところが夫が実家に帰ったのに連絡ひとつ寄越さないことで、「離婚やむなし」という考えに至った。「でもお義母さんから連絡をもらって、母と息子の時間を楽しんでいるなら、それもいいかなと思うようになったんです。今、離婚したらきっとお義母さんは悲しむし。子どもたちにしても、親が離婚したというよりは形は保っているけど別居のほうが気が楽なのではないかなと」
ところが子どもたちに聞いてみると、「別に、離婚だろうが別居だろうがどっちでもいいよ」という答えが返ってきた。子どもたちは親が思うよりずっと大人だったのだ。
「それにはちょっと驚いたけど、まあ、どっちでもいいなら、今のところはこのままでもいいのかもしれない。曖昧なのが気にはなりますが、なんでも白黒きちんと決着をつければいいというものでもないし」
25年暮らしてきた事実に愛着がある。夫に対してというより結婚生活そのもの、家庭への愛着だ。義母によれば、夫は反省しているものの意固地になって戻ろうとはしないらしい。もちろん、マサコさんが帰ってきてほしいという筋合いのものでもない。
「『とりあえずはすべて先延ばしして、今を楽しめばいいんじゃないの』と娘に言われました。それもそうかもしれない。『おかあさんだって自分のために楽しめばいいのよ。恋愛でもしたら』と娘に冗談まで言われて。そんなことは考えられないけど、私もまだ50代。これから楽しいことを見つけてもいいんだという気持ちにはなっています」
夫から久しぶりにLINEが
つい先日、夫から久しぶりに連絡があった。これまで家族LINEに連絡してきたことはあったが、マサコさん個人に来たのは出て行ってから初めてだった。「『元気にしてる?』ってたった一言。夫らしいといえば夫らしいけど、謝罪の一言くらいあってもいいはず。またちょっとムカッとしてしまったから、『元気です。そちらは?』とだけ送りました。そうしたら『元気だよ』って。それで途切れました(笑)。まだお互いに心が固いままなんでしょう」
何をしているのだろうとは思っている。ただ、自分でも頭に来ているのか許そうとしているのかわからない。今はこのままでいいということなんでしょうと彼女は苦笑した。