持って生まれた「魔性」がある
「かつてそんな年上女性に翻弄されたことがあります」そう言うのはダイスケさん(50歳)。当時、彼は45歳、相手の女性は10歳年上だった。出会ったころは同世代だと思っていたらしい。
「若く見えるし、笑顔がかわいかった。話すとき、やはり目をじっと見るんですが、それが尋常ではない長さなんです。普通、目を見て話していても、あまりにも長い時間見ていると悪いと思ってそらすでしょ。でも彼女はそらさない。目から何かを読み取ろうとしてるのかもしれないけど、こちらからすると何かを吸い取られる感じがするんです」
趣味を通じて親しくなったのだが、お互いに家庭があった。それでも彼女がためらうことはなかったという。その上、罪悪感も覚えていなかったようだ。
「こっちは妻にバレたらどうしようと戦々恐々としているのに、彼女は堂々と振る舞っている。もちろん不倫関係だとバラすようなことはしませんが、仲がいいことは隠さない。変におどおどしていたらかえって疑われると言っていましたね」
大人の「魔性」は濃くて逃れられない
そんな彼女がまぶしかったと、ダイスケさんは振り返る。若い女性の「魔性」より、大人の女性の「魔性」のほうがずっと人間的に濃いから、離れられなかったとも言った。「離れられないというか逃れられないというか、本音としては離れたくなかったんでしょうね。一緒にいると幸せを実感するんですよ。思い切り愛情をぶつけてくれるし、見返りも求めない。愛することが喜びとなっているのがわかるから、こちらも精一杯返したくなる」
うまくいっているときはそれでもよかったのだが、彼が妻に疑惑をもたれ、彼女への愛情が少し薄まりかけると、彼女はいち早くそれを察した。
「言葉で責めたりはしないんだけど、彼女の目は『意気地無し』と言っていた。『私たちの関係は結婚を越えたところにあるはずなのに』とため息をつかれたこともあります。結局、彼女のほうから去っていきました。引き止めることはできなかった。家庭を壊したくなかったから。2年ほどの関係でしたが、今でも別れたことに後悔はあります」
その後、共通の趣味の現場から離れたため、彼女と会うことはない。だが彼女のことを思い出すと、今も心が乱れる。それほど強烈な印象を残していった女性なのだろう。
「魔性系の女性に、年齢は関係ないような気がしますね。むしろ年齢を経たほうが魔が強くなるんじゃないでしょうか」
ダイスケさんはそう言って、当時を思い出すように遠くを見た。