夫への罪悪感は「なかった」
彼とは月に1~2回、時間をやりくりしてゆっくり会った。彼に会うときは、実母に来てもらったり近所のママ友に子どもを見てもらったりもした。「夫に頼んだことは一度もありません。それは夫に悪いと思っているからではなく、夫を信用していないから。夫への罪悪感を抱いたこともありません。復讐したい気持ちもなかったですね。復讐したいというのは、ある意味で愛情の裏返しなんじゃないかしら。私は彼と出会ってから、夫に対しては『社会的な配偶者』としか思っていなかった。子どもを大きくするために、子どもに好きなように生きてもらうために、夫の財力は必要だと思っていたから。それ以外に夫から学ぶことは何もない。だからなるべく子どもが夫と接触しなければいいと思っていた」
スズコさんが子どもに夫の悪口を吹き込んだことはない。だが子どもたちは父親にはあまり懐いていなかった。夫は子どもにも頭ごなしにものを言う。自分だって子どもだった時代があるのに、子どもの目線になれないのだ。
「それはもうひとえに人格的な問題でしょうね。私、以前だったらこんなことは言えなかった。夫が子どもに怒ると私の育て方が悪いんだと落ち込んでいた。でもそんなことはないと、同い年の彼が言ってくれた。私は夫より彼を信じたわけです」
それでもふたりとも現実を見ていた。すべてを失ってもいいと思うほど恋に没頭できなかったのは「彼も私も“親”だったからでしょうね」とスズコさんは苦笑した。
不倫関係を解消した事情
「1年半ほど関係が続いて、ふたりとも自分を信じよう、配偶者にバカにされるようなことはしていないと自信がついたころ、どちらからともなく『今後は友だちとして』という言葉が出たんです。恋愛関係は解消したけど、今も彼とはたまに連絡をとりあったり、年に2~3回飲みに行ったりしています。思い返せば、以前から恋愛感情が強かったわけではないのかもしれない。でも彼とつきあったことは私にとって大事な宝物です」もしとんでもないことが起こって心を壊しかねない状態になったら、たぶんいちばんに彼に相談すると思う、彼もそう思っていてくれるはずと、スズコさんは言う。婚外恋愛の結果、彼女はかけがえのない親友を得たのかもしれない。
※参考:「婚外恋愛に関する実態調査 第1報」(30~59歳の既婚男女1000人、レゾンデートル調べ)