独居の実母から笑顔が消えていく
「実家は東京から2時間ほど。5年前に父が亡くなって母がひとり暮らしになりました。最初は元気に暮らしていたんですが、1年後、家の中で転んで大腿骨を骨折。なんとか自宅には戻ってきましたが、急に弱ってしまって。私は週末になると行って家事を手伝っていました」母が弱ったことを口実に、チカコさん(46歳)の兄一家が急に実家に越してきた。母は断り切れずに受け入れた。
「お母さんの面倒はうちで見るからと兄は言うんですが、私は信用できなかった。もともと兄は父の入院中も見舞いにも来なかったし、義姉は母と折り合いが悪かったはず。母に『本当にいいの?』と聞いたら、『嫌とは言えなかったのよ』と。何かあったらすぐ助けるからと言うしかありませんでした」
チカコさんも仕事をもっているし、子どもたちはまだ高校生と中学生だから、いくら母とはいえ全面的に面倒を見ることはできない。兄一家がいてくれれば母の助けにもなるだろうと思ったのが甘かった。
「たまに顔を出すと義姉が嫌な顔をする。母からは笑顔が消えていました。どうしたのと言っても『あんたに言っても何も変わらないから』と弱気な発言しか返ってこない。私も義姉の手前、いづらいので長居はできなかった」
嫌な予感がして、こっそり実家へ
上の子の高校受験やコロナも重なって、なかなか母のところに行けなかったのだが、今年の初め、実家を訪ねてみた。「なんとなく嫌な予感がして、こっそり行ったんです。前日、電話で話したときも母の様子がおかしかったので。庭のほうから怒っているような声が聞こえるので、そうっと回ってみたら、母が縁側に座っていて、義姉が仁王立ちになっていました。
『おまえはどうせ役に立たないんだから、動き回るんじゃないよ』『転んだら私が悪者になるんだよ』と義姉はネチネチ母をいじめていました。ああ、こういうことだったのかと私は走って行って、義姉を突き飛ばしました。すると義姉は『自分の親の面倒も見られなくて押しつけてるくせに』って。何言ってるの、あんたたちこそ家を乗っ取るつもりで入ってきたんでしょうがと怒鳴りあいになった。ふと見ると、母が泣いていました」
チカコさんは一気に闘う意欲をなくした。
>母を守るために行動を起こすことにした