そこで今回は、新しいNISAの成長投資枠で損したときの対処法をまとめます。
成長投資枠で損したときの対処法
つみたて投資枠と違い、新しいNISAの成長投資枠では個別株を買うことができます。個別株投資は、うまくやれば低いリスクで高いリターンを狙える「うまみ」があります。一方、個別株投資は投資信託よりも銘柄の選択肢が多く、分析すべきこともたくさんあります。値動きも不安定で、予想できない含み損を抱えることもあります。「投資先の決算が悪くなって株価が下がる」ことや「相場の下落に押されて、何も悪くないのに株価が下がる」こともあります。
それでも「どうせなら個別株投資もやりたい!」という方もいるでしょう。そこで本記事では、成長投資枠で、持ち株の含み損を抱えた場合の対処法をまとめます。
つみたて投資のときと同じで、損をしたときの選択肢は「乗り換え」か「何もしない」か「買う」かの3択です。どれがベストな選択かは、あなたの家計事情や投資方針、投資先の状況によって変わってきます。適宜、以下を読みながら決めていくとよいでしょう。
1つ目の選択肢は「損をした資産の一部(または全て)を別の資産へ乗り換える」ことです。
株価が下がったときにまずすべきは「何が原因で株価が下がったか?」を特定することです。
損をした原因が「一時的な相場の落ち込み」(つまり、一過性のもの)で、投資先の魅力が薄れたのではないなら気にする必要はありません。
一方、損をした原因が「業績の見通しが悪化した」など、投資先の魅力が著しく悪化した場合は、損をした資産の一部もしくは全てを損切りし、別の銘柄へ乗り換えることを考えるべきです。
株価が大きく下がる典型例は、以下のようなものが挙げられます。
◯取引先が倒産して、売上回収ができなくなる
◯顧客ばなれにより、売上と利益が減少する
◯不祥事や不正を起こす
個別株は、「3カ月に1回」のペースで最新の業績を発表します。自分が思い描いたとおり、もしくは、想定以上に業績が良いのであれば、(株価が割高でないかぎり)株を売る必要はありません。
NISAの難しいところは「NISA枠の株をいちど売ると、非課税枠をしばらく使えなくなってしまう」点です。NISAの投資では非課税枠をなるべく長く使いたいものです。こういった考えが強まると、業績が先細りしていく会社の株でも「まあいいか」と持ち続けたくなります。
しかし、将来性のない会社の株を持ち続けていても、たぶん失敗します(恥ずかしながら、筆者は非課税枠を長持ちさせようとして、業績の悪い株を持ち続けて、NISAの投資資金の3割以上減らした経験があります……)。
筆者の場合、投資先の四半期業績が「去年と比べて伸びたか?」「伸びていないとしたら、なぜか?」「これから、業績を立て直せそうな、具体的なプランはあるか?」などを確認します。
業績が悪い原因が「期ずれ」などの一過性ならよいですが、「顧客離れ」などが原因だと、企業業績はいちど悪くなると回復するのが難しいです。大まかな経験則として、日本株はいちど業績が悪くなると株価も停滞しがちです。業績の回復が見込めないのであれば、悔しいですが撤退すべきでしょう。
また、取引先の倒産や不祥事は、決算とは関係なく突然発表されることも多いです。決算発表もないのに株価が下がっているときには、念のため、投資先の開示資料をチェックしておくとよいでしょう。
持ち株が割安で、将来性があるかぎり、株価変動はチャンス
2つ目の選択肢は「何もしない」こと。3つ目の選択肢は「損をした銘柄を買い増す」ことです。先ほども書いたとおり、損をした原因が「一時的な相場の落ち込み」(つまり、一過性のもの)で、あなたのミスでないのであれば、損切りする必要はありません。
個別株投資をしている方は、1銘柄に全財産を集中投資している方はほとんどいないでしょう。少なくとも2~3銘柄くらいには分けているのではないでしょうか。
いくつか銘柄を持っていると、「A株は上がった、B株は下がった、C株はヨコヨコ」のように、それぞれで違う動きをすることがあります。
あなたの持ち株が割安で、将来性があるかぎり、株価変動はチャンスです。「上がってすこし割高になったA株をすこし売り、下がってすこし割安になったB株をすこし買う」のように、持ち株をすこしずつ乗り換えることで、高い株を利益確定し、安い株を買い増すことができます。
このときは資産を「微調整」するチャンスです。NISA枠を使い切ってしまった場合は、こうした「微調整」は、NISA枠外で行うとよいでしょう。
まとめ
要点をまとめると、新しいNISAの成長投資枠で損をしたときの対処法は、◯株価が下がって損をしたら、まずは「なぜ下がったのか」原因が調べる
◯原因を調べて「投資先の魅力が薄れている」と感じたら、売却や乗り換えを検討する
◯投資先の魅力が失われていないのであれば、安く買い増すチャンスととらえる
という3点に集約できます。
つみたて投資と比べて、個別株投資では「損をしたときの振る舞い方」がとても重要です。なぜなら、つみたて投資では「投資先の魅力が劇的に薄れる」ことはあまりないのですが、個別株投資ではよくあるからです。
はじめのうちは「損をしたまま売りたくない」と感じることもあるでしょう。しかし、個別株投資では「売らないともっと損をする」ことも多いです。現実をきちんとみて、冷静に判断できるようになりたいですね。