脳科学・脳の健康

Q. ストレスは実際に「溜まる」のでしょうか? そもそもストレスって何ですか?

【大学教授が解説】「上司がストレス」「ストレスが溜まる」など、日常的によく使われる「ストレス」という言葉。多用される中で、ストレスの定義や言葉の使い方も変わってきているようです。どの点が誤りで、何が問題なのか、わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q. そもそも「ストレス」って何ですか? 実際に「溜まる」のでしょうか?

よく「ストレスが溜まる」とか言いますが、そもそもストレスって何ですか?

ストレスって何?


多くの人が日常的に口にする「ストレス」という言葉。実際にはどのようなもので、本当に「溜まっていく」ものなのでしょうか?

Q. 「忙しくて体調を崩したとき、友人から『なるべくストレスを溜めないようにね』と言われました。ふと思ったのですが、「ストレス」ってそもそも何なのでしょうか? 実際に体のどこかに溜まっていくものですか?」
 

A. ストレスは瞬間瞬間の反応です。「溜まる」という表現は間違いです。

「ストレス(stress)」という言葉は、もともとは物理学や工学で用いられていた言葉です。物体に外部から力を加えて変形させようとしたときに、その物体にかかる「負担」のことです。言い換えれば、「外部からの力に対抗して元に戻そうとするためにその物体の内部に発生する力」のことでもあります。日本語では「応力」とも言います。

これが、生物の身体反応を表す言葉として流用されるようになり、最近では「忙しすぎてストレスが…」といった使われ方をしています。一方で、「ストレス」という言葉が多用されるうちに、誤った使われ方が定着してしまっているようです。たとえば「上司がストレスだ」「忙しくてストレスが溜まる」「ストレスを受ける」といった言い回しは、言いたいことは伝わるかもしれませんが、いずれも誤りです。

生物学的なストレスとは、そもそも「寒冷、感染、心労など、体外からかかる刺激に応じようとして体の内部で生じる様々な『体や心の反応』」のことを指します。ですから、「上司がストレス」と言うのは間違いで、「上司でストレスが生じる」というのが正しい表現です。また、ストレスを引き起こす外的刺激のことは「ストレッサー」と呼びますので、耳なじみがないかもしれませんが、「上司はストレッサーだ」と言えば正しい表現になります。同じように、「ストレスを受ける」という言い方もおかしく、「ストレスを生じる」または「ストレッサーを受ける」が正しい表現です。

「ストレスが溜まる」という言い回しも非常によく使われていますね。「何か悪いものがずっと残って体から消えない」というイメージで言われているのでしょうが、こちらも実はおかしな表現です。ストレスはあくまで、心臓がドキドキする、血圧が上がる、呼吸が速くなるなどの「体や心の反応」のことなので、「溜まる」ことはありません。「血圧上昇が溜まる」という表現がおかしいのと同じです。ニュアンスや気分としては「溜まる」と言いたくなるところでしょうが、「ストレスが続いている」のように表現するのが正しいと言えるでしょう。

伝われば問題ないと思われるかもしれませんが、たかが言葉、されど言葉。そもそもの意味が分からずに使っていると、正しい表現ができなくなり、その仕組みの理解や対策法も取り違えてしまうことがあります。ストレスが続いている状態はもちろん改善すべきですが、一度生じた目に見えないストレスが、「体のどこかにずっと溜まり続けている…」とイメージしてしまうことの方が、精神衛生的にもよくないのではないでしょうか。「ストレス」という言葉を正しく使おうと意識すると、自ずとその本来の意味が理解できますし、適切に対処できることにつながります。
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