お金の悩みを解決!マネープランクリニック/自営業・フリーランス・会社経営する人のお金の悩み

64歳の夫婦。貯金8000万円。夫はフリーランスで持病があり、無理できなくなっています

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、フリーランスで働く夫がいる64歳の女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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国民年金で少しでも受給額を増やすために2人とも繰り下げを予定しています

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、フリーランスで働く夫がいる64歳の女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
夫の仕事は少なくなっていっています

夫の仕事は少なくなっていっています

■相談者
カエさん
女性/パート・アルバイト/64歳
関東/持ち家(マンション)

■家族構成
夫(自営業/64歳)、子ども(社会人30歳、同居)、子ども(社会人29歳、別居)

■相談内容
夫はフリーランスで持病があり、無理できなくなっています。仕事は依頼されるもので若い感覚が必要でもあり、何とか頑張っていますがどんどん少なくなってきています。70歳まで仕事があればいいなとは思っています。私も70歳まで今の職場で仕事ができます。

夫は多趣味で趣味にはお金を惜しみません。収入が多かった時期はそれで良かったのですが、今は使い過ぎ感が否めません。これまで頑張ってきた夫にやめるように言うのはかわいそうにも思っています。ただ、出かけてもチェーン店で食事を済ませたり、バーゲンのみで衣服をそろえる自分のことを考えると、不公平な気分になるのも事実です。

今年から年金受給ですが、国民年金で少しでも受給額を増やすために2人とも繰り下げを予定しています。年金繰り下げは70歳を予定しており、夫月額8万5000円、私月額12万円くらいと厚生年金とくらべてまだ少ないです。

老後資金はこのままで足りるのか、対策を取るとしたら、どんな方法があるのか教えていただければと思います。

■家計収支データ
相談者「カエ」さんの家計収支データ

相談者「カエ」さんの家計収支データ

■家計収支データ補足
(1)ご家族の状況について
同居している子どもから3万円もらっていますが、すべて本人名義で貯蓄しており、独立時に渡す予定です。

(2)貯蓄について
毎月7万円の貯蓄は、小規模企業共済の積立金で、70歳で廃業する場合は1500万円くらいになると思います。

(3)家計収支について
支出は書いているもの以外に国民健康保険料4万円、医療費1万5000円、消耗品や被服費や交通費を雑費に入れるのでしたら雑費がプラス3万円くらいになると思います。収入に増減があるので、家計簿アプリを使い、全体を把握するようにしています。赤字が出た次の月は食費を少し抑えたりしていましたが、最近は普通預金から補填する場合もあります。まだ普通預金が極端に減っていることはありませんが、70歳まで年金を繰り下げている間にどんどん減っていかないか、そこを懸念しています。

(4)住居費について
住宅ローンは完済しており、3万円は管理費、修繕積立金です。

(5)趣味娯楽費について
夫7万円で、旅行、ゲーム課金、スポーツ観戦などです。車は持たないので、旅行ではすべて交通費やタクシー代がかかります。私は1万円で、友人とのランチや観劇代です。

(6)加入保険について
夫/
・個人年金保険(70歳まで払い込み、71歳~10年間、毎月5万円の年金)=毎月の保険料5万円
・医療保険(終身タイプ、70歳まで払い込み、入院時5000円)=毎月の保険料1万円
・共済(病気死亡500万円、入院時9000円)=毎月の保険料4000円
・がん保険(夫婦タイプ、終身払い)=毎月の保険料6000円

相談者/
・生命保険(死亡時1000万円)=払い済み
・医療保険(終身タイプ、70歳まで払い込み、入院時5000円)=毎月の保険料1万円

(7)働き方について
夫同様に、私も70歳までは働くつもりです。ただ時間などを減らすかもしれません。そうなると収入は7万円くらいに上下がるかもしれません。年金の繰り下げは、夫婦とも70歳を予定しています。70歳過ぎても収入がある場合は、繰り下げの延長をしてもいいかと思いますが、ちょっと厳しい気もしています。

(8)公的年金について
「年金繰り下げは70歳を予定しており、夫月額8万5000円、私月額12万円」は、70歳まで繰り下げた場合の金額です。

(9)今後の暮らしについて
夫は旅行好きですが、私は出不精でインドア派です。観劇などが趣味なので、互いに自分の好きなことをしながら生きていければいいなと思っています。

■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 老後の金銭的な心配は、まったくなし
アドバイス2 保険の見直しで、生活コストを整理すれば気持ちはラクに
アドバイス3 1年後に仕事を辞めても大丈夫。お金のために頑張る必要なし

アドバイス1 老後の金銭的な心配は、まったくなし

結論から述べると、老後の金銭的な心配は、まったくありません。子ども2人は成人し、住宅ローンも完済。これだけの金融資産を残されたのは、立派なことです。いろいろ心配ごとは尽きないかもしれませんが、不安に思うことは何もありませんよ。

仮に、現在の家計の状況で70歳まで働いたとします。貯蓄はもうしなくていいとすると、毎月の支出は36万円ですから年間で432万円、約450万円。70歳まで繰り下げた公的年金は2人で20万5000円、年間246万円ですが、手取りで210万円とします。収支差は240万円。

現在の金融資産を取り崩さなければ、8000万円。これに小規模企業共済の1500万円。個人年金保険が10年分で600万円。合計1億100万円です。

70歳から毎年240万円を貯蓄から取り崩していくと、ゼロになるのは42年後。つまり、夫婦2人は112歳。老後の金銭的な心配は、まったくありません。

アドバイス2 保険の見直しで、生活コストを整理すれば気持ちはラクに

ここで話が終わってしまったら、それはそれで安心できないかもしれませんね。少し家計を見直すこと、仕事は70歳まで続けなくてもいい、という観点でアドバイスしていきましょう。

まず、家計で見直す点はほとんどありませんが、保険だけは以下のアドバイスをもとに検討してみてください。現在、個人年金保険の払込みが残っています。収入が継続しているうちは払い続けられるかもしれませんが、金融資産が十分にありますので、残りの期間の保険料360万円を前納したらいかがでしょうか。

また、本来は金融資産があるので、保険は不要です。夫の医療保険、共済、がん保険は解約。ご相談者の生命保険は払い済みになっているので、そのままでいいでしょう。医療保険は終身タイプで70歳で払込みが終わりますが、それまで保険料負担は続きます。もしも割り切れるようでしたら、医療系の保険はなくても大丈夫です。もし気になるようでしたら、一律の掛金で加入できる共済に、夫婦それぞれ加入すれば十分です。2人で4000円で済みます。

保険を見直せば、毎月の保険料8万円はなくなり、毎月の支出は28万円になります。年を重ねると自然と生活コストは下がっていきますが、これだけまとまった金額が削減できれば、気持ちがずいぶんラクになるはずです。

さらに、収入は最低限36万円必要な状態から、28万円で大丈夫という生活になれば、気持ちの余裕も出てくるでしょう。

アドバイス3 1年後に仕事を辞めても大丈夫。お金のために頑張る必要なし

そこで、70歳まで働き続けるのではなく、公的年金受給が始まる1年後に仕事を辞めたとします。

65歳から受け取れる公的年金は、繰り下げ後の金額から割り戻すと、おそらく夫婦で月額14万円ほど。年間168万円で手取りは約145万円。国民健康保険の支払いは現在の月4万円からかなり軽減され、年金から天引きされます。よって、毎月の支出は28万円に医療費の1万5000円を加えて29万5000円、約30万円です。年間360万円となり、収支差は215万円となります。これを先に計算した金融資産1億100万円から取り崩していっても、46年持ちます。夫婦2人とも111歳です。

小規模企業共済を65歳で辞めた場合、受取り額は1500万円から減少しますが、それほど大きな影響はないでしょう。

マンションはローンなしの持ち家、万一のときの生命保険も払い済みですから、1年後に仕事を2人とも辞めたとしても、やはり一生涯、金銭的に困ることはないのです。

そう考えると、これからはご相談者も、もっと好きなことにお金を使ってもいいと思いますよ。趣味娯楽費でご主人と同じ月7万円使ったとしても年間84万円。30年続けても問題はありません。

仕事に関しては、これまで生活のリズムとなってきたので、完全に辞めるのではなく、楽しく働ける範囲で無理なく続けていけばいいでしょう。もう、お金のために頑張らなくていいです。

夫婦でときどき、おいしいディナーを食べにいくなど共通の楽しみを見つけて、どうぞ健康にお過ごしくださいね。

相談者「カエ」さんから寄せられた感想

深野先生のアドバイス、読ませていただきました。具体的な数字で解説していただき、とても参考になり、また安心しました。特に保険関係はこちらもどれを続けどれを解約したらいいのか悩んでいるところでしたので、先生のお話で見直す決心がつきました。夫の仕事は生き甲斐でもあるようなので、健康に障らずお仕事をいただける限り続けていくと思います。私もお金を使うことに罪悪感を持たないで、楽しく過ごしていこうと思います。本当にありがとうございました。

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子
 
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