「夫婦の会話時間はどのくらいあるか」という質問では、2005年の調査でも2020年の調査でも、妻と夫、ともに平均時間はおおむね1時間半。意外と会話時間が多いように思えるが、自己申告でもあるし、そもそも「会話」がテレビを見ながらの団らんまで含めているかどうかもわからない。
一方で、わかりやすいのは「0分」と答えた人の数。15年の間に「0分」は、夫が0%→4.5%、妻が0.5%→3.5%と増加したのだ。こちらのほうが注目すべき数字なのかもしれない。ほとんど会話をしなくても、家庭は成立しているともいえる。
本来楽しいはずの会話が、苦痛になっていく
返事のしようがない話がつらい
夫たちがいちばん困惑しているのは、「返事のしようがない話」に付き合わされることだという。「今日はこんなことがあって、あんなことがあってと話してくるのはいいんですが、その事実だけ話して終わり。『あ、そう』としか言いようがない。『聞いてるの?』と怒られるんですが、聞いてはいます。最後に『で?』『だから?』というともっと怒られるから、『へー、そうだったんだ』と言いますが、何を言いたいかわからない会話は本当に困る。こういうことがあったから、こんなふうに思った、あなたならどうするかとかどう思うとか言うならまだわかるんですけどね」
ユウジさん(42歳)はそう言う。7歳と4歳の子をもち、毎日、家事に育児にパートにとがんばっている妻には敬意を抱いている。だが、妻の話はいつも事実の羅列だけ。コミュニケーションは「伝える」だけではなく、「その後、自分の意見を交換する」ことが大事なのではないかとユウジさんは考えている。それを妻に何度か言ったつもりだが、妻はいつも話し終えて、ユウジさんが「だから?」と言うと、「だからって、それだけよ」と少しむくれる。
「で?」「だから?」と聞くのも疲れた
「妻はまっすぐで誠実な人。いい子でもある。だけど会話は深まらない。本当は自分の意見をもっているはずなのに、どこかで人に協調しようとする気持ちが強すぎるんでしょうね。あるときそれに気づいたので、自分の意見を言えばいいよと言ったら『みんな、どう思ってるんだろう』と。人並みでなければならないというプレッシャーの中で育ってきたのかもしれないけど、夫婦の会話なんてもっと自由でいいはず」ただ、毎回、「で?」「だから?」と聞くのも疲れてしまったユウジさん。最近は聞いているフリをしながら右から左に流してしまう。このままではよくないとわかっているが、会話を深めようとしない妻に、少しだけうんざりしかけているそうだ。
>聞かされるほうだってつらいんだ!