離婚したいと毎日言いかけて
子どもを通して父と母としてやっていくしかない。そう思っていたところに、夫の失職である。夫は落ち込み、仕事を探すと言いながらずるずると家にいる生活が続いている。「夫の両親も来て心配してくれたりしたんですが、『オレは心身ともに疲れ切ってるんだ』と最初のうちは泣いていました。でもいつの間にか、昼間からパチンコに行ったりしている。生活費を切り詰めても意味がなくなっていて、とうとう貯金に手を着け始めたところなんです。夫、必要か? ある日、そういう言葉が自分の中から出てきた。いらないじゃん、夫、必要ないじゃん。そう思いました」
お金だけのために一緒にいたわけではないが、そもそも夫婦関係は怪しい状態だった。そこへ夫が失業したとなれば、エツコさんが「夫、必要か?」と思うのもやむを得ないのかもしれない。
「オレなんかいらないよな?」と夫
「離婚しよう、別れたい。それが言えないんですが、私の態度に出ているんでしょうか。先日、『もうオレなんかいらないよな』と夫がつぶやいたんです。そうだねと言えればよかったけど、私は言葉が出なかった。夫の立場が弱いときに冷たいことは言いづらい。夫は『明日から仕事を探すから』と言ったから、やはり少し期待してしまったんです。でも結局、夫は探しに行かなかった。思いあまって義母に電話したんです。夫の両親は、生活費の足しにしてほしいと、夫の口座にお金を振り込んでいるとわかりました。でも夫はそのお金で遊んでいる。お願いだから見捨てないでと義母に言われたけど、もう無理……」
それから1ヶ月、彼女は夫に別れたいと言い出す機会を狙っている。腹は決まった。自分が「冷たい女だと思われたくなかった」だけなのだともわかった。たとえ冷たいと思われても、まだいくらか貯金があるうちに離婚しないと、今後の生活の不安が増すだけだという現実にも気づいた。
養育費だけは払ってほしい。うまく折り合いがつくようがんばってみます。彼女はそう言って元気よく去って行った。