Q. 外食時に飲んだ薬の空き容器は、お店に置いたままでも大丈夫ですか?
自宅以外で薬を飲んだとき、空き容器はどうするのがいいのでしょうか?
Q. 「外食時、レストランで食後の薬を飲むことがあります。飲んだ薬のゴミはごく小さなものですが、お皿に置いていいのか、紙などでくるんだ方がいいのか、あるいは紙で見えなくなるとよくないのでそのままにすべきか、いつも少し迷います。もちろん風邪薬のように、感染が心配されるようなものでもありません。どうするのが正解でしょうか?」
A. 自分で出したゴミは持ち帰るのが気持ちいいですね。薬の種類ではなくマナーの問題です。
処方される薬は、食後に飲むよう指定されているものが多いと思います。この場合の「食後」とは、食事の後30分以内を意味します。空腹時に飲むと胃が荒れてしまう薬や、食べ物と一緒でないと吸収されにくい薬もありますが、いつ飲んでもかまわない薬でも、飲み忘れを防ぐ目的で「食後」と指定されていることもよくあります。いずれにしても、外食時も薬を飲むとなると、レストランなどお店の中で食事が済んでから、そのまま服薬する方も多いのかもしれません。筆者も先日あるファミリーレストランに行ったとき、高齢のお客さんが店員さんをわざわざ呼び止めて「薬を飲みたいのでお水をください」とお願いし、数種類の薬を飲んでおられたのを見かけました。
正しいタイミングでの服薬は健康のために大事なことですが、問題は飲み終わった後に空いた薬の包装をどうするかです。ごく小さなゴミだと思われるかもしれませんが、筆者は「自分で持ち帰る」のがいいと思います。理由はいくつかあります。
まずは、お店から提供されたものではなく、自分が外から持ち込んで、自分が出したゴミですから、持ち帰るのが良識あるマナーだと思うからです。ゴミを放置してお店を後にするよりも、そちらの方が気分的にも気持ちいいと思います。
また、少しかたい話をすると、近年は環境問題への関心が高まりつつあり、薬の包装ゴミについても環境へ配慮すべきだといわれるようになってきました。とくに、薬の錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだ「PTP包装シート」は、薬が大気に触れないことで吸湿や紫外線などによる変質を防ぐことができる上、プラスチック部分を強く押すとアルミが破け、中の薬が1錠ずつ取り出せる便利な構造になっていることから、広く普及してきましたが、どう処分すべきかが議論されています。
これまではほとんどが焼却処分されてきましたが、「Q. 病院で処方された薬が余ってしまいました。燃えるゴミとして捨てても大丈夫でしょうか?」でも紹介したように、近年は使用後のPTP包装シートをアルミニウムとプラスチックに分別してリサイクルする取り組みが始まっています。専用の回収箱を設置した病院や薬局もありますので、少し手間はかかりますが、可能な方はぜひ利用していただければと思います。レストランなどにPTP包装シートを置いて帰ると、おそらく一般ごみとして焼却されてしまうでしょうが、持ち帰った上でリサイクルすれば、社会貢献にもなるでしょう。
また、どのような薬のゴミかわからない危険性や、片づける人が不安になるかもしれないものを放置するモラルのなさを問う声も聞かれますが、薬学的な観点からいうと、正しく服用された後に残った薬の包装に危険な成分が残存していることは、実際にはほとんど考えられません。衛生面では、薬の空き容器以上に、口元の汚れを拭いた紙や食べ残しなどのゴミの方が考慮されるべきものですので、健康被害という点では、そこまで不安に思われなくても大丈夫です。
誰もが自分の健康を守りながら、気持ちよく公共のスペースを利用できるように、一人ひとりがマナーを大切にするのがいいのではないでしょうか。