「いい加減、はずせば?」としつこい女友だち
専門家の間でもマスク着用の効果に関しては諸説あった。そうなれば自分で調べて、自分が信じる方法をとるしかない。アキエさん(40歳)は、こんな経験をした。
「屋内、密室、人が密。やっぱりその3条件がそろうと気にはなりますね。先日、昔からの友人の結婚パーティがあったんです。ふたりとも再婚だからと結婚式は特にせず、友人を招いての立食パーティでした。ところがこれが狭い会場に大勢の人で換気も悪く、大丈夫なのかなという感じ。食べるのもそこそこにして、マスクをして他の友人たちとしゃべっていたんです」
すると共通の友人がつかつかとやってきて、「いい加減、マスクをはずしたら? 来ている他の人たちに失礼よ」と言った。アキエさんがなぜ失礼なのかと聞いたら、顔がわからないからだと彼女は言う。
「私は単なる友人だから、顔がわからなくても構わないだろうし、そもそもあなたにマスクをとれと言われるのもおかしな話よねと静かに言いました。すると彼女、『いつまでもビクビクしてマスクして、この暑いのにさらにうっとうしいわ』って。最初は失礼だと言っておきながら、そのうち暑いからうっとうしいと主張が変わっている(笑)。
あとから別の友人が、『彼女、以前はマスクをしていない人にキリキリしていたのに、今はマスクをしている人にかみついてるの。おかしいよね』って。まあ、時流に乗りたい人なのかもしれないけど、ヘンな世の中になりましたね。うんざりしたので、早々にパーティは引き上げました」
叩く人の目的は、マスクの是非ではない
マスクをする人しない人、それに関してとやかく言う人言わない人、世間の意見はどんどん枝分かれしていくようだ。「いちばん大事なのは、他人の行動を不必要に叩かないことかもしれませんね。マスクをしている人もしていない人も、それぞれ事情なり考えなりがあるんでしょうから」
いい雰囲気だったパーティを離脱せざるを得なかったのは残念だったが、自分のせいでその場の空気を悪くしたらそれこそ「失礼にあたる」とアキエさんは考えた。それが「思いやり」というものではないだろうか。