従姉妹に罵られることになった理由
あるとき、例の彼から「たまにはドライブでもどう?」と連絡があった。いいねとサユリさんは応じた。「代休を消費しないといけないと彼が言うのを聞いて、私もそうだと気づいた。それで日程を調整して平日、朝からドライブに行くことにしたんです」
娘が帰宅する前に帰れなかったらという思いもあり、従姉妹の許可も得た。忙しい日々を送っていたサユリさんには何よりの楽しみとなった。
「その日、帰宅が結局、夜近くになってしまったんです。彼と話が弾んでしまって。彼が従姉妹の家の近くまで送ってくれ、あわてて迎えに行ったんですが……。玄関が開くなり、従姉妹にののしられたんですよ。『あんたは男と遊ぶために娘を私に預けてるの!?』って。いや、違う、そうじゃないと言おうとしたけど聞く耳を持たない。娘にも聞こえていたと思うし、ひょっとしたら娘に何か吹き込んだかもしれない。あわてて娘を連れ帰りました」
あげく、従姉妹はサユリさんの田舎の母にまで言いつけたようで、母からも早速電話が入った。
「娘にはちゃんと話しましたよ。ママは娘ちゃんといるのが何より幸せだけど、ママにもあなたと同じように友だちがいて、ときどき会って話をしたいの、と。すると娘が『新しいパパが来るの?』という。従姉妹に吹き込まれたなと思いました。来ないよ、ママは娘ちゃんとふたりで暮らしていきたいと思ってると目を見て話しました」
近所の人が目撃し、密告した
同世代の従姉妹は現在、専業主婦で子どもをふたり育てているが、もともとは両親も本人も教育関係で、性格的にもまじめで堅い。情には厚いのでサユリさんの娘を預かってもくれたのだが、ただ「男友だちに会う」だけで、あれほどののしられるとは思わなかったとサユリさんは言う。実はサユリさんが男性と一緒に車に乗って出かけるところを近所の人が目撃、それを従姉妹に密告したらしい。「見られたのは不覚でした。本当は男友だちに会うと言ってもいいんだけど、従姉妹の性格上、嫌なことを言われるのがわかっていたから、残業だとごまかしてきた。私もいけなかったんですけどね」
その後、従姉妹からは「もう預かれないから」と言われ、母親からも「あなたの娘に恥ずかしいことはしないほうがいい」と言われた。いったい、どうしてそこまで大問題のようになってしまうのかがわからないとサユリさんは言う。
「たまに息抜きしたっていいですよね。シングルマザーが友だちと飲みに行くと、それだけで育児放棄みたいな言われ方をするのがどうしても解せない。娘にも言ったとおり、娘は私の宝物だけど、たまに利害関係のない大人とも話したいですよ」
会社で離婚経験のある同僚にそんな話をしたら、「わかるー」と共感された。
「『私たちの苦労なんてわかってもらえないのよ。今度飲もうよって言われて、いや、それをやるとまた怒られるし』って(笑)。でも彼女とはそれほど家も遠くないので、お互いに子どもを交えてたまには遊ぼうという話になりました。例の彼ともたまには話したいし、学生時代の仲間とも少しずつ会う機会を増やしたい。私のお楽しみ時間はせいぜい月1ですから、その時間だけは母でも会社員でもない、素の自分でいたい。わかってくれない人がいるのは、もうしかたがないことだと諦めています」
娘最優先だけど、それでも自分の人生は自分のものだからとサユリさんはきっぱり言った。